カカイル

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 しかしイルカの鏡像分身は本体と全く同等の能力だけでなく、思考をも持っているようだった。
 分身というより、鏡の向うからもう1人の自分を呼び出すような術なのかもしれない。

 だからこそ、連携体術ができるのだ。

───でーもまさか、あの《比翼連理》をまた見られるなーんてね……

 昔、カカシが目にしたのは気のあった夫婦による、誰かを内に守っての連携体術だった。

 だが、確かにイルカの使ったものと同じ技。

 あの2人は自分の師の側近だった。
 周囲が呆れるぐらいに仲睦まじく、カカシぐらいの息子がいると話していた覚えもある。

 そしてあの日、2人一緒でなければ役に立てないと言い張って、唯一夫婦で4代目に付き従い、共に九尾の前に散った。
 息子1人を残して。

───うみのって家名で気付くべきだったなぁ……

 多分、カカシとイルカは過去に会っている。
 だが互いの記憶にはないだろう。

 その程度の邂逅。

 しかし2人を繋ぐものは──それを何と呼ぶべきかカカシは悩むが、確実に存在する。

 どういうワケか、そのことを嬉しいと思い、カカシは驚く。
 
 何時の間にかカカシの中に、うみのイルカへ向かう気持ちが育っていたのだ。

───マズイな……

 そう思いながらも、どこかでこれでいい気持ちがある。

 イルカがナルトを憎み、同時に愛しく思う事情は想像がつく。

 その情の深さと強さだけは図りかねるが、分かるのだ。

 かつてカカシも、同じジレンマに陥った過去がある。

 あの12年前の事件。

 カカシも苦しんだ1人だ。

 多くの者を失って、失って、失って。

 全てを亡くしたと思った果てに、ようやく今にたどり着いた。

 最後に自分を闇の底の手前で踏みとどまらせたのは、師との思い出。

 そして耳にした、里でのナルトとイルカの存在だった。

 そのイルカがカカシと同じ闇に落ち込もうとしているのなら、今度は自分が手を差し伸べる。

 きちんとイルカを引き止め、引き上げるだけの力が自分にあるのか、カカシには分からない。

 分からないが、やらずに放棄するつもりもなかった。

───こうなっちゃたの、先生がうみのさんたち説得できなかったからですよー

 今は亡き師の面影に、カカシは愚痴る。
 
───ま、出来の悪い弟子ですが、精一杯の尻拭いはさせてもらいまーすよ

 どうしても引き上げてやれない時は、共に落ちてやってもいい。

 そう、覚悟も決めた。


 


 やがて小一時間ほどで数名の尋問部隊を率いた森乃イビキが到着した。

 生け捕りにした敵の上忍だけでなく、死骸をも回収していく尋問部隊を眺めながら、イビキとカカシは状況の確認をしあう。
 もちろん実際に接敵した2人の中忍も。

「お前が遅れをとるとは珍しいな、カカシ」

「あーもうっ!アスマにも散々いびられてヘコんでんだから、余計なコト言わないっ」

「そうだったな。それでイルカ、何か変わったことは?」

「いつも通りですよ、イビキさん」

「では、詳しい話は捕虜に聞くとしよう」

 イビキとイルカは夜間哨戒の任務で顔を合わせる機会も多いらしく、話も早い。

 木ノ葉崩しの被害や新たな火影についての探りか、それに乗じての襲撃以外でなければ、ここで報告しあう価値もないようだ。

「で、そちらは?」

「はい。あの……」
 
 
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