カカイル
□眠り姫
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「もう必要ないだろうから、今抜いといてやるって言ってんだよ。ぶってないで、さっさと出しなっ!」
「いーです! 自分で抜きますっ!」
医療用カテーテルを抜く抜かないで言い争う、里が誇る上忍と新たな火影。
なんとも情けない光景である。
「フン! アンタ、本気で私に敵うとでも思ってんのかい?」
「敵う敵わないじゃない! やってやるよっ!」
すでに写輪眼全開で雷切も発動しているカカシに対し、綱手は殺気を込めた一瞥をくれただけ。
しかし、それだけでカカシの動きは一瞬、止まる。
その一瞬が、全てだった。
木の葉の里に、男の悲鳴が響き渡る。
* * * * *「なんだい、やけにもったいぶるからどんな立派もんかと思ったら、あんたも人並みだねぇ」
「……ううぅっ」
50年という年月を医療スペシャリストとして生きてきた綱手の一言には、経験や実績という裏打ちがある。
半分の人生経験しかないカカシにはとても反論できなかった。
「ほらガイ、次はアンタの教え子んとこいくよ! 呆けてないでさっさと案内しなっ」
言い様、綱手は固まったままのガイの後頭部に軽い一撃を食らわせる。
それで覚醒した熱き上忍は、金縛りから解放されるや言い放った。
「こんな奴のことより、次は我が弟子リーを見てやって下さい!!」
どうやら凝固している間、脳細胞の一片たりとも作動していなかったらしい。
布団に包まったまま涙するカカシには、それだけが唯一の救いであった。
* * * * * その後、見舞いに訪れたイルカに、カカシは涙ながらにその出来事を語ったという。
「イルカせんせぇー…、オレ、汚されちゃいましたー」
「アンタまだ穢れてなかったとでも?」
「ヒドイですーっ! イルカせんせーっ!」
中忍の一言は、火影の一撃よりも、抜け忍の精神攻撃よりも、傷心の上忍に多大なダメージを与えたのだった。
【了】
‡蛙娘。@ iscreamman‡
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WRITE:2004/10/26
UP DATE:2004/10/26(PC)
2009/06/20(mobile)
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