カカイル

□1周年お題
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nartic boy
1周年お題SS
 
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「ごめんなさい」

 あなたとおつき合いはできません。

 そう告げて誠実に頭を下げる人をみた。

 忍者アカデミーの裏庭。
 まだ夏の青さをしぶとく残した銀杏の大木の下で、見慣れたその人と見知らぬ女性が向かい合っている。

 女性は目に涙を一杯溜めて頬を真っ赤にしていた。
 膝の上辺りを握り締めた細くて小さな手が震えている様が、初心で可愛らしい。

 けれど、未練がましくいい縋ろうとする彼女に、彼は静かな声ではっきりと告げた。

「オレ、今とても好きな人がいて、その人とおつき合いをしています」

 だから、あなたとおつき合いすることはできません。

 揺るがぬ意思をもって真っ直ぐに見つめる人に、なすすべなく女性は駆け去っていった。

 彼女の気持ちをお断りをしたことは申し訳なく思うのだろうが、決して引きとめはしない。
 
 自分が大事にするべきは、あなたではないと態度でも示してやっている。

 なんて、かっこいい男だ。

「あの子より先に告白できてよかった〜」

 よくやった。
 よくあの時、勇気を振り絞った。
 グッジョブ、オレ。

 うっかりと本音を口にしたその声を、カカシが惚れ抜いた男前はもちろんしっかり聞いていた。

「後先の問題じゃありません」

 オレの気持ちの問題です。

「やだなあ。分かってますよ、イルカせんせ」

 
【了】

WRITE:2005/10/09
UP DATE:2005/10/10(PC)
   2009/11/15(mobile)
 
 
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