カカイル
□この道の上
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この道の上───そういやぁ先生も、いーっつも楽しそうだったなーぁ……
目の前で楽しそうにじゃれているイルカとナルト。
その2人の姿に、ふいに過去の自分と師の姿が重なった。
嬉しそうに師の腰にしがみつくナルトと、そっぽを向いて両腕を組んでいた生意気な自分では対照的なくらい反応が違うが、先生は先生のまま。
教え子の反応を楽しそうにたしなめる、その笑顔。
愛しさに溢れ、今なら潔さをも汲み取れる、笑顔。
懐かしさと切なさに、胸と鼻の奥が痛む。
───あーぁ、ヤベ……泣きそ……
夕暮れ時で人通りもまばらとは言え往来で涙する自分の姿を想像し、カカシはとっさに滲み出そうとする涙を苦笑に変えた。
「ホントッにお前はー、イルカ先生イルカ先生って……」
わざと呆れた風に、でもほんのちょっぴり本心からの嫉妬を込めて呟き、教え子の頭を軽くはたく。
そのまま金色の髪を混ぜるように、少し力をいれて撫でてみた。
昔、自分の師がしていたように。
「んあ〜〜〜っ! なぁにすんだってばよっカカシ先生ーっ!!」
その手から逃れ、ナルトはイルカを盾に抗議の声をあげる。
別に髪型を気にしてとか、カカシの力加減がまずかったとかではなく、単にカカシに撫でまわされることを避けたらしい。
「なぁにヨ、イルカ先生に同じコトされてもイヤがんないじゃないの」
せんせー傷ついたよ、今のはー。
「ひょっとしてー、オレのコト嫌ーい?」
「そっ、そーゆーんじゃねぇってばよっ」
「なら、いーじゃん」
そう言ってカカシが手を伸ばせば、ナルトも避ける。
いつしかそのまま、イルカの周りをぐるぐると回りだしていた。
「オイ、コラッ、ナルトッ! ちょっ、カカシ先生までっ!!」
「だってカカシ先生がっ」
「お前が逃げるからデショ」
上忍と下忍が同レベルの言い訳を同時に口にするのを聞いて、中忍は頭痛を覚える。
そしてさっと右手を翻し、ナルトの首根っこを掴まえた。
左腕はカカシを制するように突き出す。
「カカシ先生も、ふざけないでくださいよ」
アナタにナルトが捕まえれらないハズないでしょう。
「ホラ、ナルト。お前ェももうガキじゃねえんだろ。簡単にオレに捕まるなっ」
「「だーってぇ」」
「だってじゃねぇっ」
2人一緒に答えるものだから、イルカも怒鳴りつける声に苦笑が混じる。
「とっに……、2人とも本当に忍者かー」
「おうっ!」
「いちおー、上忍でぇす」
何故か自信満々な下忍と、申し訳なさげな上忍。
「でぇもオレとしては、そのまんまイルカ先生にお返ししたいですよー」
「は? オレですか?」
「だぁってよ、イルカ先生ってばすぅぐ怒るし、何かってぇと怒鳴るしー」
「それは、お前ェがオレに怒鳴られるようなことばっかしてっからだろうがっ」
「ああ、ソレですよ、ソレ。オレが言いたいのもー」
カカシはナルトの揶揄に乗っかり、イルカに詰め寄る。
「イルカ先生、すぐ感情的になるデショ。それに自分が正しいと思ってるコトは、相手が誰だろうが突っかかってくしぃ」
上忍だろーが、火影様だろーが。
「今だって、温厚で良識的なオレだから穏便に済んでる状況ですよ」
「ハイ、嘘!」
びしりと言い放った教え子の影で、イルカもこっそり声を合わせているのをカカシは見逃さなかった。
write by kaeruco。
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