カカイル

□この道の上
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「……イルカ先生」

「あ、いや、申し訳ありません、つい……」

「いーいですけどねー、べっつにー! それにねぇ」

 へらりと笑って、カカシは続ける。

「いつでも、誰の前でも、イルカ先生はイルカ先生なとこが、いーんですよ」

「オレ、です……か?」

「なーぁんかねえ、アナタとかナルトとか見てると、思い出すんです。先生を」

「先生って、カカシさんのスリーマンセル時代の、って……」

 ナルトの耳に入らない声で、イルカは呟く。

「(4代目、ですよね……)」

「ええ、全っ然、似てないんですけどね。あの先生、馬鹿みたいに強かったしー。でもねえ、ちっとも忍者らしくないトコとかー、いっつも楽しそうなトコとかー、なんとなく、似てんですヨ」

───あとコイツの髪の毛とかね

 今度は軽く手を乗せてやれば、ナルトもおとなしくしている。

「忍者らしくねえって、それでホントに強かったのかってばよっ!」

「さあてね。オレが知る限り、一番強い人だったけどなー」

 カカシの知る中で最も強い。

 その意味に気付いたのか、ナルトも黙り込む。
 
 なんとなく、しばらくは無言で歩いていた。
 ナルトを間に、イルカは左側からまだ小さな肩に触れ、カカシは右側から頭に触れて。

 やがて、またぽつぽつとカカシが話を続け出した。

「オレは、あの先生が忍らしく見えないのは、ケタ外れて強いからなんだって思ってたんですけどねー」

 なんてゆーか、まあ、余裕ってやつなんだと。

「でもこの頃、あれは先生の地っていうか、天然だったんだなーって、分かりました」

「地、ですか……」

「そ。あの人は忍である前に、至極真っ当な人間だったんでしょーね」

 カカシは道端の花を見つめ、懐かしそうに呟いた。

「先生はそれがどんな花か分からなくても、どんな状況でだって、キレイなもんはキレイだって思う人でしたから」

「ああ、それは、分かる気がします」

 ナルトにはまだ話が見えていないようで、しきりに首をひねっている。
 それを見てイルカは、まったく違う話を始めた。

「ナルト、今オレたちは一緒にこの道を歩いてるだろう」

 突然そう言われ、戸惑いながらもナルトはうなずく。
 
「でも、ここへ来るまでは別々に歩いてたし、そのうち分かれる。第一、今同じ場所にいても、見えている景色は全然ちがうんだ」

 お前の目の高さと、カカシ先生の目の高さは違うだろう?

「みんなそうなんだよ。同じ所にいて、同じように歩いていても、みんな見えているものが違うんだ。同じ道の上だとしても、人によって、時によって」

 ただ、真っ直ぐに前を見てイルカは続ける。

「歩きつづけるには辛い時もあるだろうし、気が抜けるほど穏やかな時もあるかもしれない。誰かが道を阻む事だってあるし、逆に助けてくれることもある」

 でもな、これだけは忘れるなよ。

「どの道を行こうが、誰と共に歩もうが……」

 そこで、まっすぐ前を見据えていたイルカが、一瞬カカシに視線を向ける。
 カカシもじっとイルカを見ていた。

 だがすぐに2人は何事もなかったように、また前を見つめる。

「後悔しようが、後戻りしようが、それは全てお前が決めた道だ。それだけは、忘れんじゃねえぞ、ナルト」

「おうっ! ちゃぁんと、分かってるってばよ、イルカ先生っ!」

 勢いよく2人を振り返り、ナルトは宣言する。
 
 
write by kaeruco。
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