風と歩む未来(あした)

□六蹴〜奇縁〜
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俺は私用で部活に遅れ、着替えてグラウンドに行くと将がいなかった。

「?………佐藤、将はどこだ?」

「ん〜?ポチやったら、小姑タツボンに怒られて帰ったで」

「俺は小姑じゃないし、タツボンって呼ぶな!!」

佐藤が水野をからかって遊んでるのを横目で見ながら、マネージャーの仕事を始めた。

「あっ、神流!ちょっと良いか?」

部活も終わりに近付いてきた頃、水野に呼び止められた。

「…何だ?」

(何かミスでもしていたか…?)

「明日から新入部員が入るんだ。だから、ドリンクをいつもより多めに作っといてくれるか?」

「解った…」

(何だ…何かミスした訳じゃないんだな。…しかし新入部員か。面倒な事にならないと良いんだが…)

部活が終わり俺は一度家に帰ってから、将がいると思われる河川敷に向かった。

「……将」

声をかけたのは良いが、将の纏う空気が何か可笑しい。

「えっ、あれ、月!?いつの間に来たの?」

「ついさっきだ…。ところで、何でボールを蹴っている?」

「え、あっ、その、これは…」

俺の問いに将はしどろもどろになった。

「………はぁ、別に解っていたから良いけど。足は大丈夫なのか?」

「あ、その…」

「…足を出せ、テーピングする。…ところでどうしたんだ?落ち込んでいるみたいだが」

テーピングをしながら、将を見た時に感じた違和感を尋ねる。

「あ、うん…。…ねぇ、月は自分のシュートを素人に、止められた事ってある?」

(それが原因か?…ならばここは正直に言うべきだよな)

少し迷いながらも、俺は将の疑問に答える。

「…いや、素人に止められた事はないな」

「そう、だよね…。月はサッカーすっごく上手だもんね…」

「いや、そうじゃない。俺は素人と対戦した事がないんだ…」

「え、そうなの!?」

「あぁ…、ところで将が落ち込んでる原因は、それなのか?」

「う、うん…。あっ!でも原因はそれじゃなくて、その後なんだ…」

「…その後?」

…いったい何の事だ?
将が何が言いたいのか解らず、首を傾げる。

「えっと、月は僕のシュートをどう思う?」

将のシュート…?それは。

「…真っ直ぐだな。シュートする場所を目で見ているから、コースは読まれやすい…」

「ゔ…、やっぱりそうだよね…」

…いけない、将を落ち込ませるつもりじゃなかったんだが。

「……それなら、回転をかけるシュートにしてみたらどうだ?」

「回転?」

「そうだ。相手は素人なのだろう?ならば、こういう奇策には弱いはずだ」

「あっ、そうか!アウトフロントキックだね!」

「そう、あれなら蹴った方とは反対の方に曲がるからな…。しかし流石だな将。サッカーの知識かなりあるんだな…」

これで技術が知識に追い付いたら、どうなるのか…見てみたいな。

「っと、テーピングはこれで良いはずだ。立ってみろ」

「うん、痛くない…!!」

将はしゃがんだり、軽く跳びはねたりして確認していた。

「これなら、あまり無茶をしなければ大丈夫のはずだ。…特訓するぞ」

「えっ!?…協力、してくれるの?」

将は俺の言葉に目を見開いた。

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