任務遂行報告書
□特別任務
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風が冬の訪れを告げている。
気が付けば、自然と足がこの場所に向かう。
慰霊碑…
師の名も、若く散った友の名も、そこに刻まれている。
「時間だ。行くぞ。」
ライドウに声をかけられ、カカシは振り向いた。
「わざわざ来なくったって…」
子供っぽい言い訳が口から出そうになる。
『どうも、この人は苦手なんだよね…』
若いのに、古いタイプの忍者で、派手な忍術を好ま無い。
容姿風貌総て並。
名は体を表すって言ったら可哀相かな…。
無言で走る男の後を追いかける。
里の出入口とは反対の北の外れ。広大な演習場の端が集合場所に指定されていた。
「見付かったか」
「…ああ」
先に着いていたアオバに短く答える。
今回の任務は『Sクラス』だ。隊の基本は四人一組だが、カカシは一人でこの二人を護衛し、援護する。
『買い被りでしょう…?』
支給された黒いマントに身を包んだ三つの影が里から遠ざかった…。
†
夜に移動し、昼は身を潜める。
無茶な行程だ。
無駄な戦闘を避ける為に遠回りしながら進んで行く。
三日目の明け方、目的地の宿場街に辿り着いた。
変化の術で観光客に成り済まし街へと潜入する。
アオバが宿をとるあいだ、ライドウと二人、甘味処で待つ事になった。
「甘い物は苦手なんだけど…ね…。」
「そうなのか?」
「いつも言ってるじゃないの…。」
「そうだっけ?」
店員が持って来たのは焼き餅を醤油に浸し海苔で巻いた物だった。
「磯辺巻きって言うそうだ。これなら甘く無いぞ。」
「…知ってますよ。」
店員がもう一つ持って来た皿には、みたらし団子。
「…アンタ、甘い物好きだっけ?」
「まあ、そうだな。」
答えると、唇に付いたタレを舌先で嘗めとる。
「…ったく、子供か?お前は」
いつの間にかアオバが来ていた。
「今日明日と、この街で観光だな。」
ライドウの横に座ると、奥から店員が茶を運んで来た。
「[草]はなんて言ってる?」
「明後日が『祭だ』と」
「…そうか」
†
「おっ…と」
落ちかけたタレを舌先で受け止める。
そのまま、先端の団子を一つ口に含む。
視線を感じ左をむくと、カカシと目が合う。
「よく考えたら、アンタたち服装と髪型変えただけじゃない?」
アオバはサングラスの形を変えてはいるが、ライドウに至っては傷すら隠していない。
カカシは完全な別人に変化しているのに。
「お前は目立つからなぁ」
アオバの言葉に串の尖端をくわえたライドウが頷く。
『…やっぱり、苦手だ。』
「くそっ、食いにくいな…」
四番目の団子に手間取っている。
皿に残っていた団子をアオバが食べていた。
「タレ、付いてるぞ」
ライドウが、アオバの口許に付いていたタレを親指で拭い、その指に付いたタレを舐めとる。
「……」
「…なに?」
『自覚がないから始末悪い…』
アオバは慣れたもので、団子の皿を店員に渡している。
「ん〜」
伸びをしたかと思うと、
ライドウが15、6歳の 少年に変化していた。
動きが自然だっただけでなく、元の存在感すら残っていない。思わず、魅入ってしまった。
『変な所で業師なんだよね…』
「カカシは、ほんと、神経質だなぁ。」
残った餅は、アオバが平らげた。
「そういう問題じゃないでしょ?」
「毒なんか入って無いって。」
宿までの無意味な会話にウンザリする。
この、緊張感の無さはなんだろう…
「…本当は、ただの観光旅行…とかは無しですよ?」
オレの言葉に、ライドウとアオバが顔を見合わせる。