乙男☆跡部景吾

□君にフォーリンラヴ
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俺、跡部景吾は困っていた。


「へ〜、君、拓実チャンって言うん?可愛い名前やなぁ」
「いえ…。でも良かったの?奢って貰っちゃって」
「かまへんかまへん」

何故…

「しっかし、拓実チャンは強いんやね。」
「囲まれている忍足君達見たら、とっさに足元にあったボール蹴っちゃった」
「ホンマ助かったわ。有難うな」
「とんでもない!困った時はお互い様だよ」

何故、忍足は普通に会話が出来る!?


「跡部君?どうかした?」
「!?」

九条拓実と目が合った。
帽子を取って顔を見せた彼女は、普通に可愛かった。


「忍足、ちょっと良いか」
「え〜何なん?今拓実チャンと話して、ぐえっ」


反論する忍足を引きずって、手洗いに逃げ込んだ。
忍足は引き摺られながら、「ちょお待っててな〜」と九条拓実に手を振った。








「で、何や?」
「お前…どうして普通に会話できる」
「は…?」

忍足は一瞬不思議そうな顔をした後、ニヤリと笑った。

 
「はは〜ん、跡部、惚れたんやな?」
「いや、今日会ったばかりだ。早急には決められない」
「でも気はあるんやな?」


ニヤニヤ笑う忍足に、黙っておけば良かったと思うが、他に頼れる相手が居ない。


「目が合うと言葉が出て来ねぇ」
「跡部…そんなに…。よし、ここはこの忍足侑士さんが助けたるわ!」


ウキウキ顔の忍足に、不安がよぎった。
助けて貰ったお礼にと、忍足が彼女を強引にファーストフード店に連れて来たのだ。








「拓実チャン、お待たせ〜。」
「ううん、跡部君、大丈夫?」
「あん?」

九条拓実が不安そうに俺の顔を見て来た。

「跡部君、具合悪いのかと思って…」
「俺様は問題ない」


横で忍足が、「もっと優しく喋りぃ」と注意して来るが、彼女には、何となく格好悪い自分は見られたく無かった。


そして、1時間程話すと、と言っても、殆ど忍足と九条拓実が話していたが、
彼女は家に帰ると言う事で、駅まで送る事になった。


「そういや、何で今日はこんな所まで来たん?青学から遠いけど」
 
確かに忍足の言う通りだ。
俺達はテニスの大会で来たが、買い物に来るような場所ではない。

「私はちょっと習い事に…」
「え、何してるん?」
「お、お料理教室…」


忍足が固まった。
さっき彼女の強さを目の当たりにしていたから、てっきり運動関係かと思っていた。


「え〜!そら今度拓実チャンの料理食べてみたいわ〜」
「いや、私料理苦手なので無理です。」


はっきり言いきる彼女に、忍足がわざとらしく転ける。


「何や〜。残念やなぁ、跡部」
「ああ」


瞬間忍足がニヤリと笑った。


「あんな〜跡部料理得意なんやで?」
「忍足!お前!」


金持ちの息子が、料理得意とかおかしいだろ!確かに、趣味だけど!

不安になって、九条拓実の顔を見ると、案の定驚いた顔をしていた。

終わった…


「へ〜跡部君、凄いね!今度教えて欲しいな」
「おっええやんええやん」


彼女の反応は予想外で。
とても嬉しかった。


「ああ、いつでも教えてやる」









君は俺を、受け入れてくれるのか?

 
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