乙男☆跡部景吾

□氷帝学園に王子参上
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結局眠れず、あくびをしながらの登校になった俺、跡部景吾。
恋をすると、少女漫画を読みたくなるのは何故だろう…。

昨夜は『オトメン』を読み耽ってしまった。
『オトメン』は、人前では優秀な日本男児の鏡、本当は料理や裁縫好きという男主人公が、恋をする話だ。

どうも他人のような気になれない、この主人公。
俺も恋をして少しは変われるんだろうか…。


「なぁに朝から溜め息ついてんねん、跡部!幸せ逃げるで?」
「忍足か…」

学校の玄関先で声を掛けられ、顔を向ければ、

「幸せな顔するか、疲れてる顔するかどっちかにしいや」

と言われた。

「あーん?どういう意味だ」
「目の下にクマ作って、そんな幸せそうな顔されたら気色悪いっちゅーねん。

…なんや、拓実チャンと何かあったん?」
「…ああ。今日の放課後に会う約束をした」


そう言うと忍足は酷く驚いたようだった。


「奥手な跡部がよう誘えたなぁ」

別に誘ったわけじゃない。
昨日の事を細かく忍足に話すと、いつものニヤニヤ顔になった。


「なんだその顔は」
「別にィ〜」

 
そう言い、忍足は俺とは別のクラスへと歩いて行った。


「侑士ぃ〜おはよ」

俺様が離れたのを見計らったかのように、女子が忍足にくっつく。

…あいつは好きでも無い女子に触れられても平気だという。
俺は…、無理だな。


「跡部、おはよ」
「ああ、宍戸か」
「うわ、何だよそのクマ!」

クラスには、同じクラスの宍戸が居た。
コイツも忍足と同じで中学からの腐れ縁。俺がオトメンなのを理解してくれている。


「そうだ跡部!もうすぐ俺の彼女の誕生日なんだが、プレゼント一緒に選んでくれ」

宍戸はいつも彼女のプレゼント選びに俺を呼ぶ。
何でも、女の子の喜ぶツボを心得ているとか…。

ただ、毎回男だけで行くのは少し恥ずかしかったりする。


「構わない」
「じゃー今日の帰りな」
「今日だと!?」

俺の声が大きかったのか、宍戸が驚いた顔をした。

「何だ?今日は部活オフだろ?それとも用事、あったのか?」
「…ああ。お前の彼女の誕生日はいつだ」
「明日」
「明日か!?」


じゃあ今日しかダメじゃねーか。


「宍戸、別にもう1人居ても良いか?」
「ん?忍足か?」
「いや、女の子…だ。」
「女の子…」


宍戸も驚いているようだ。
とりあえず、放課後の約束をして午前中は何事も無く終わった。





昼食はいつも忍足と宍戸と樺地の3人と屋上で食べる。
忍足の分はいつも俺か樺地が作り、宍戸は彼女が作ってくれるらしい。


「跡部の弁当はいつも旨そうやな」
忍足が俺の弁当を開きながら言った。

「テメェも弁当位作れるようにしとけ」
「俺には景吾ちゃんからのお弁当あるからええの!」
「ちゃん付けやめろ!」
「きゃー怖い!」


忍足はいつも俺様をからかって、楽しいのか!?
それにしても、


「宍戸、お前何で彼女と食わねぇんだ?」

いつも弁当を作ってくるクセに、彼女は彼氏である宍戸と食べようとはしないらしい。


「何でも、仲間うちで昼休みに集まりがあるんだと」
「昼休みにわざわざ?変な連中やな。」


忍足の言うことは最もだが、宍戸は彼女に夢中らしく、何もツッコまずに今まで過ごして来たようだ。
まあ、2人がそれで良いなら何も言わないが…


俺様はやっぱり拓実が彼女だったら――

 
って何考えてるんだ俺様は!


「跡部〜にやけたり、衝撃受けたり、何妄想してん」
「妄想じゃねぇ!なぁ樺地!」
「…ウス?」
「樺地だってお前が何考えてんのかわかんねーって」


宍戸の笑い声が屋上に響き渡った。


 
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