乙男☆跡部景吾

□好きなコからの差し入れ
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今日は都大会の2回戦。これに勝つと準々決勝に進む事になる。
気合いが入るが、何より気合いを入れてくれるのは…


「跡部君!頑張ってね!」


拓実の笑顔。
例え、彼女が持っているタオルに『気合いだ!』と太く濃い筆字で書かれていても気にしない。

そして、彼女の横でニヤニヤしている宍戸の彼女に関しては、スルー決定。



「『跡部君!頑張ってね!』やて。見せ付けてくれるわ〜」
「忍足…」

「しっかし何で輪島が応援来とるん?てっきり二次元しか興味無いと思ってたで」
「いや、アイツはもっと質悪いぜ」



「きゃートリシシペアー!!」



忍足が口を開こうとした時、輪島の声が響いた。


「アイツ三次元もいけたんかい」
「そういう問題じゃねーだろ」



応援席の女子達も、今の声援に危険を察したのか、今や輪島達の周りはクレーターになっていた。



「輪島は宍戸の彼女だ」
「何やて?」

そう言うと、忍足が見事にフリーズした。


「おう跡部、九条来て良かったな」

 
そこへ、飛んで火に入るなんとやら、宍戸がやって来る。

忍足がすかさず宍戸の肩を掴んだ。


「うお!何だよ!」
「宍戸ー!考え直しい!」

俺は「オシシシよ!」と言う輪島の声を聞いた。


「お前ら…とりあえず試合が始まるからコートから離れろ」


俺の言葉で、選手控え席に向かった。
俺はコート横の監督席に座る。


榊監督は、中学と高校のどちらのテニス部も顧問として参加して下さっているが、
中学の方に力を入れていて、高校の方は部長の俺が仕切っていた。

今日の相手校は、名前も知らない無名校。
中学の時に無名校に一度負けてから、宍戸が無名校もバカにできないと真剣に調べるようになった。

が、今日の相手は氷帝なら問題ないという事だ。


シングルス1の俺様の出番は無いだろう。


ベンチに座っているだけで、試合は消化されて行った。


ダブルス2試合と、その後の3試合目のシングルス日吉の試合が終わり氷帝の勝ちが確定すると、女子の歓声が上がった。


「日吉、ご苦労だったな」
「いえ、部長への下克上が目標なので」


 
コイツは良く分からない。
いつも俺を睨むように見てきては、「下克上だ」とか呟く。

ハッキリ言って不気味だ。


「跡部君!お疲れ様」

背後から声がして振り返れば、拓実が立っていた。


「そちらの方は…?」
「あ、私は、跡部君のお友達の九条拓実と言います。」

日吉の疑問に答える拓実に、日吉は眼光を強くした。

怖いから早く離れたい…

「あ、日吉君も一緒にお昼どう?」
「え、良いんですか?」
「宍戸君達も一緒だし」


……………

…拓実はこういう子なんだよな。
優しくて頼もしくて、まさに理想的な王子。


って俺はバカか。女の子に王子だなんて、失礼だろ。




結局、宍戸・輪島のカップルと、拓実と日吉と俺でお昼を食べる事になった。


午後は、氷帝の試合はないが、ライバル校の青学の試合がある。
ライバルの試合は観ておかねぇとな。



「日吉君の家、道場なんだ!私の家もそうだよ。今度試合したいね」
「へぇ、看板賭けますか」
「強気だね」


…女の子の会話じゃない!
日吉は男だけど!



「そういえば跡部君、私、差し入れ持って来たんだ」
「そ、そうか」
「跡部君にはかなわないと思うけど…」


俺はドキドキしながら、拓実が鞄から箱を出すのを見ていた。


ふと、
「跡部君にはかなわないかもって…
跡部先輩、料理するんですか?」

何で日吉は無駄に鋭いんだ!


「お俺様が料理なんてするわけないだろう。何寝ぼけた事言ってやがる日吉。

拓実、うちはよりすぐりのシェフが作ってるからな、そこそこ旨いが、拓実が作ってくれた料理の方が美味しいに決まって…。」


俺も、俺を疑っていた日吉も、拓実の出したものを見て固まった。


 
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