乙男☆跡部景吾

□お料理教室
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「跡部君!今日は宜しくお願いします!」
「ああ」
「何で俺も呼ばれたん?」


今日は俺、跡部景吾の家で九条の為にお料理教室を開く事になった。


「忍足…お前、毎日俺が弁当作ってくれるからとだらけ過ぎだ!そのだらけがテニスに影響するんだ!」
「跡部…、真田みたいや…」


泣き真似をする忍足は見ずに、九条に顔を向ける。


「今日は初めてだし無難にクッキーなんかどうかと思うんだが…」
「わークッキーって市販のものしか食べた事無いな」


九条は嬉しそうに笑った。


「よし、厨房に移動だ!」




厨房に入れば、真っ先に忍足が口を開く。

「流石、跡部の家や…」
「凄い…ホテルの厨房みたい…」


九条も辺りをキョロキョロしている。


「あーん?ここの厨房が気に入らないのか?」

「いや、気に入る気に入らんの前に、広すぎや…」


俺の家は、住み込みの使用人が沢山居たり、時々パーティーをしたりで、そこらのホテルと同等以上の厨房を付けてある。

 
「まあ、広くたって使うのは一部だけだ」
「ま、まあ、そうやな」


忍足の返事で、料理の準備を始める。


「忍足!ボウルを寄越せ」
「…ボールなんて料理に使うん?」
「先生!私取って来る!どこ!?」


「いや…お前らの目の前にあるんだが…」


忍足はバカにするように俺を見るし、九条に至ってはやる気満々で外に行く姿勢をみせる。

この2人…家庭科の授業に出てないのか?



ボウルの存在を知った2人は、怪訝そうにそれを弄る。


「ボールやのうて半球やな!」
「言えてる!」


この2人に教えるのは、相当骨が折れそうだ…。



その後も、卵を割れと言えば、パフォーマンスばりの卵の握りつぶしをみせる九条や、

型抜きをさせれば、芸術家並みの美女の体を描く忍足に振り回されつつ、

漸くオーブンにクッキーの原型を入れる所まで来た。


「何やねん、俺のなかなか上手くできてたやん…」

忍足の物は俺様が細かくハートの形に型抜きしてやった。
九条の前で何てもんを作りやがる!

 
「鉄板の上にクッキングペーパーをひいて…って!それはサランラップだ!」


サランラップを鉄板にひこうとする九条を急いで止めた。
最後まで気が抜けない。


「これで暫く待てばクッキーが焼き上がるんだね」
「そんなら跡部の部屋でゲームしようや」


九条は嬉々としてオーブンを覗き込み、
忍足はいそいそと俺の部屋に向かおうとする。


「待て忍足、俺様の部屋に入るのか?」
「何や、何か問題あるんか」


問題はない。多分。
昨日の内に、ぬいぐるみやメルヘンな壁掛けは閉まったはず。


「よ、よし。行くか」


好きな女の子が自分の部屋に来ると思うとドキドキする…。
意識するな自分、意識するな自分!


「跡部君の部屋って落ち着いてるね〜」
「ま、まあ俺様だからな」


よし、完璧…
「跡部〜ここにあったアミグルミ、どこやったん?」

ばっと振り返れば、嫌な顔をして笑う忍足。


「ああ、あれな…今は散歩に」
「え、可愛い!散歩に行ってるの?」
「クックックッ」


九条が食いつき、忍足は面白そうに笑う。

 
「忍足、貴様…」
「俺なーんもしてへん。あれ、いつも枕元にあったレッサーパンダのぬいぐるみも無いやん」


忍足が俺の部屋の全貌を、九条にわざと分かるように話して行く。


「今日は皆居ないみたいで残念だな。跡部君、可愛い部屋に住んでるんだね!」


九条は笑顔でそう言ってくれた。
次に来てくれる時には、いつも通りの部屋でいいかな…。






「九条チャン、強いなー!」
「家で良くやるから」


九条は、ゲームが強かった。




その後、焼きあがったクッキーを3人でラッピングして、料理教室は終わった。


「あかん、俺、型の抜き方しか覚えてへん」
「私はボウルを覚えたよ!」



まだまだこの2人が料理を覚えるのは先だろう…。




続く

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