乙男☆跡部景吾

□ラヴ★サバイバル
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「拓実チャン、お料理教室行っとるんや無かった?」

そんな忍足の一言から始まった。





今日は金曜日だが、都大会の準決勝が行われ、俺、跡部景吾率いる氷帝テニス部は会場へ集まっていた。
勿論、授業は公欠扱いである。


「各自アップしておけ!レギュラーはコート内に集合」


俺が指示を出せば、部員達は準決勝の興奮からか、ガヤガヤと喋りながら散っていった。



「今日のオーダーを発表する」


こうしていつも通りをこなしていった。

相手校は、千石率いる山吹高校。
ダブルスの山吹とか言われているらしいが、うちのダブルスだって負けちゃいねぇ。

「トリシシ〜!」
「や・め・ろ!」

いつの間にか、背後に忍足。
今日応援に来ているのは、テニス部以外には、公欠にならないのにわざわざやって来る奇特な連中しか居ない。

その中に宍戸の彼女は居なかった。


「この試合は貰ったな」

宍戸・鳳ペアは山吹のダブルス2に勝った。


問題は…

 
ダブルスが弱いと言われていた青学のように、氷帝も個々人の能力は高いがダブルスに向かない連中ばかりだ。


忍足と向日を考えたが、できれば忍足をシングルスで使いたい。
日吉と向日のペアも悪くは無いが、中学で一度負けているせいか、無意識に組むのを避けている。


そこで、だ。
俺は滝を呼ぶ。直ぐに滝はやって来た。


「本当に俺が出ても良いのかな?」
「構わん。勝てよ」


滝と向日で行く事にした。
滝なら性格も落ち着いているし、向日の滅茶苦茶なプレーにも付いていけるはずだ。


まあ、負けた所でシングルスの注意すべきは千石と、怪童・阿久津。
外国帰りだかなんだか知らねーが、中学の試合を見た限り注意すべきと判断した。



「跡部も、準レギュラーの滝を出すなんて思いっきった事するなぁ」
「負けたら準レギュラーからも落としてやる」
「おぉ怖い」


結局、ダブルス1もこちらの勝利に終わった。


次は…

日吉と室町がシングルス3をしている。
シングルス2の忍足に、一応アップしておくように指示を出す。


朝から始まった山吹戦も、昼に差し掛かろとしていた。

 
「跡部、アップして来たけど、俺の出番はなさそうやな」


実力は互角のようだったが、日吉が調子良く点を採っている。



「跡部〜今日は拓実チャン来ないんか?」
「約束していないし、そもそも今日は普通授業があるだろ」


忍足は飽きもせずベンチの後ろで話し続け、そして冒頭のセリフになる。


「最初に会うた時、拓実チャン、お料理教室の帰り言うてたやんなぁ…。でもキッチン立った事無さそうやったけど、どんな料理教室行ってんねやろ?」
「確かにそうだな」


もう、目の前の白熱する試合なんか観ていなかった。


「ちょお、今度付いて行ってみたらどうや。」
「いや、それはいくら何でも…」



「あっ拓実チャンー?お願い事があんねんけど…」
「忍足…」


忍足は拓実に携帯電話でその『お願い事』を話すと、意外にもあっさり許可が出た。



「跡部、やったな!」

日は今週の日曜日。
丁度大会も無く、部活もオフだ。


『ゲームセット!ウォンバイ日吉!』


試合も勝利に終わり、俺は来るべき日曜日に思いをはせる。

 
 



後々、恐ろしい事が待ち受けているなんて知らずに…。




 
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