乙男☆跡部景吾

□参謀・柳蓮二の憂鬱
1ページ/2ページ

 

「蓮二、昨日はな、」
「なんだ弦一郎。また九条という女子の話か?」
「そうだ。九条、おにぎりを握れるようになったんだ!」
「………」



俺、柳蓮二は、友人の真田弦一郎の言葉に、反応出来なかった。


「待て弦一郎。確か九条は、俺達と同学年、だよな?」

嬉々として、昨日のお花教室(九条は料理教室だと思っている)の話をする真田に、毎回訳が分からず戸惑う。

朝練で疲れているというのに、中学からこの真田は人を疲れさせるのが得意だ。


「そうだが」
「丸井でも簡単なお菓子を作れるというのに、九条はおにぎりも握れなかったのか?」


と言うか、おにぎりは小学生でも握れる。


「いや、九条は握れるは握れるのだが…何分、味付けが苦手でな」


味付けは、苦手とかの問題だろうか。


「要するに、料理音痴なんだな」
「いや、九条だって本気を出せば、料理が上手いに違いない!」


弦一郎は九条の事になると、ムキになる時がある。


「よし、今度差し入れで何か作って来て貰おう!」

 
弦一郎はそう1人で決断すると、電話をしだした。

弦一郎が携帯の使い方を覚えたのは、高校に入ってから。
幸村に無理やり持つように仕向けられたのだ。

機械関係は無理だろうと思っていたが、人前で醜態を晒す事が何より嫌いな弦一郎は、携帯の機能を一通り知っている。


先日、俺と幸村にデコメールの仕方を聞いてきたのを思い出し、笑いをこらえていると、予想もしない名が聞こえて来た。


「跡部か、おはよう。」

…跡部といえば、氷帝の跡部が思い付くが、なぜ?

九条の事は名前で呼んでいるのだから、九条の名字というのも考えづらい。





「どういう事だ」

世の中分からない事だらけと言うが、正に真実である。
電話の終わった弦一郎に、試しに氷帝の跡部か聞いてみると


「そうだ。昨日、跡部を九条が連れて来てな。忍足も居たぞ」


九条は青学だったはず。
接点が見いだせない人間が、ぞろぞろあつまる謎のお花教室とやら。


興味深いな…。


「跡部達は一体何を…?」


「うむ、楽しそうに畑の手入れをしていたぞ!」

 
 
あの跡部が畑仕事…?











「信じられんな」
「何がだ、蓮二」


弦一郎の話を聞いて数日後の放課後、俺は青学にやって来た。
テニス部関係者という事で、部室にて貞治から九条の情報を聞き出そうと考えたのだ。


「貞治、九条という女子は知っているか」
「九条、…生徒会だから、青学の殆どの生徒は知っていると思うぞ」
「ほう、生徒会か」


貞治によると、九条は生徒会の書記で、字がとても上手いとか。
習字など、弦一郎が好きそうな話題だ。


「あとは、家が道場で、力技が凄い」


痴漢を撃退してからは、学校中の女子に支持されているんだ。と貞治は笑いながら言った。


「しかし、なぜ突然九条の事を?」
「弦一郎が彼女と同じ習い事をしているらしく、良く名前を聞いて気になっただけだ」
「習い事…?まさか料理教室か?」



九条は料理教室に行っているらしい。
武術が強くて、料理が趣味…。

ある意味、凄い女子だな。


弦一郎の習い事の件は、内緒にして欲しいと本人から言われているので、
適当にはぐらかしておいた。



ふと、部室の扉が開き、ジャージの手塚と1人の女子が入って来た。



「柳か、今日はどうした」

手塚は俺を見ると声を掛けて来た。
アポ無しだったから驚いたのだろう。


「悪いな。少々調べものがあってお邪魔させて貰った」


手塚は一言「そうか」と言うと、ロッカーに置いてある鞄から何やら探し物を始めた。



「蓮二、彼女が九条だ」
「そうなのか」



テニス部というわけでは無いようだ。
なら生徒会の仕事か。手塚も確か生徒会長をしていたはず。


「やあ、九条。こんな所まで珍しいね」

貞治が親しげに声を掛けた。


「今日副会長が休みで、変わりに色々してるんだけど、わからない事が多くて…」


そうか、跡部も生徒会長だから、生徒会関係で知り合った可能性が高い。

 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ