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□アメリカン・レモネード
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半年の研修を終え、正式な配属先も決まった秋、松田春彦は途方にくれていた。慣れない仕事で疲れきっていた体にむち打って、参加した飲み会だというのに、この仕打ちはなんだと文句の一つでも言ってやりたいのだが、悲しいかな。まだまだ新人の自分には、言い返すことも、たてつくこともできず、得意の作り笑いでやり過ごすだけだった。覚えてろよ、と心の中ではしっかり悪態をつきながら、目の前の上司の話に付き合い続けた。

「だいたい、最近の若いやつは―――」
はいはい。どうも、すいませんね。
「で、たいした努力もしないくせに、文句ばかりいいやがる。」
ごもっとも。
「おい、松田。聞いてんのか。」
「はい。聞いてます。」
「だいたい、お前もな・・・」
また、始まった。

さっきから、同じ話の繰り返しでぐちぐちとつまらない話を延々聞かされ、さすがにうんざりしてきた。完璧な絡み酒だ。どうも、この上司は酔うと説教くさくなるらしく、先輩がたは「また、始まった」みたいな顔で遠巻きに見つめている。

助けろよ。

て、無理だろうな。こうして自分がターゲットになっている内は、自分達に火の粉はふりかからないんだし。俺だって自分に損なことはしたくない。
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