遥か1・2
□翡翠
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潮風が我が君の頬を荒々しく撫でていく。
少し疎ましそうに君は眼を細めた。
いつものことじゃないか、そんな風くらい。
そうは思っても君はまた私を疎ましそうに睨むのだろうね。
それが本当の君の表情(かお)でないと知っているのは……
「頭領?どうかされまして?」
「いや、何もないよ。
ただ、我が白菊の君に見惚れていただけさ。」
「頭領?」
君はまたそうやって私を睨む。
「いいさ。本当の心を知っているからね。」
「何か仰られましたか?」
「いや。風が気持ちいいと言っただけさ。」
この海賊の頭領である私を魅了し、あろうことか自分の心を先に奪われてしまうとはね。
まあでも、悪くない。
君の本心を知っているからね。
毎日こうして海の上で過ごすことで、私は君という人を深く知ったからね。
いつかは我が君の為に、地上(りく)に上がらなければいけないね。
☆終☆
遅くなりすいません。
ヒロインは翡翠のいた伊予の国の女性です。
淑やかな女性をイメージしてみました。
それではこれからも紅桜をどうぞよろしくお願い致します。
2008/11 貴世