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□Urban Legend
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Urban Legend
act.1
Urban Legend
アーバンレジェンド
【Urban Legend】
都市伝説。
運命だと思う。
でなければきっと、悪魔の悪戯だ。
彼女との出逢いは、後者。
……てゆーか、そのものかも。
悪魔との出逢い……だな。
◇◆◇◆◇
高校三年の冬。
受験を控えた12月。
僕──武川直は、世間的には一流と言われている大学の受験勉強に(追われるという程でもなく)励んでいた。
というのも、どういうワケだか僕の周囲には、大抵の大学ならテストさえ受ければ合格確実の学力があったりする。
そんなワケで、よそに比べれば精神的にも時間的にも余裕があった。
自然、僕らの日々の関心や話題は受験よりも趣味や嗜好に走りがちになる。
人気ドラマの最終回で誰が死ぬかとか、どのヒット曲が年末の賞レースで評価されるのか、移り変わりの激しいアイドルグループのメンバーの動向とか。
本当にどうでもいい、まさに内容のないような雑談ばかり。
そんな話題のなかで、僕は初めて彼女の存在を知った。
「マジそっくりでさ、びびったってーか……」
幸運にも彼女の姿を見かけたっていうそいつによれば、秋葉原のインターネット・カフェ、ジャンク・ステーション(略してジャステ、JS)という店に彼女がいるという。
架空の存在であるハズのその店のマスコット・キャラクター、アコード──にそっくりな女の子が。
「って、モデルなんじゃねーの?」
「そーかもしんねーなー。てゆーか、マジそーじゃねーかってくらい、クリソツ」
正確には、僕がアコードの存在を知ったのはずっと前で、彼女の噂は幾つか聞いている。
ただそれはマスコットのアコードであって、実在の人物じゃない。
アコードはジャンクステーションのマスコットで、美少女キャラクターだ。
つり上がった大きな目に大きな黒い瞳、ツインテールの髪も黒い。
肌は真っ白で、小さな口はいつも楽しそうに微笑んでいた。
そしてそういったキャラにありがちな胸や太もものボリュームは際限なく削ぎ落とされていて、極端に短いスカートから伸びる足だけでなく、全身が折れそうに細い。
ネットカフェのキャラだからか、頭から4本のプラグインコードがリボンのように揺れていた。
店に設置されたパソコンのヘルプ画面では彼女が笑顔で対応してくれるし、スクリーンセーバーではデフォルメされた彼女が走り回っている。
サイトにはファンが投稿したCGが紹介されているし、時々配布される壁紙やアイコンなんかもある。
幾つか支店はあるものの、全国展開なんかしていない店のマスコットでしかないアコードだが、(僕の見解では)下手な美少女キャラクターの人気を上回っていた。
彼女を扱った同人誌や同人ソフトは結構出回っているし、話題や噂も耐えるどころか増えているように思う。
そしてアコードには他の美少女キャラやアイドルとは一線を画す、ある噂があった。
ちょっとオカルトチックな都市伝説──アーバンレジェンドって類の。
オフィシャルから無断で画像を転載したり、あまりにもあんまりなモノを作った人間のパソコンはもれなく凶悪なウイルスで再起不能にされる……らしい。
up date:2008/12/08
write by Hamada.M.《蛙女屋携帯書庫》
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