a-cord
□Urban Legend
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不幸にも自身のパソコンが昇天する場面に立ち合ってしまった人によれば、直々の警告があったという。
更に奇怪なのはネットワークに接続していないパソコンやワープロにまでやられたとか。
他にも印刷所や出力センターでもとか、家のテレビ画面に警告がでたなんてホラーまがいの話まである。
ここまでくると眉唾ものだけど、本当でも犯罪じゃないかって思う。
噂で済ませらんない数の被害者はいるが、殆どは自業自得だけど。
そんなワケで僕は一応、彼女──アコードのことを多少、知っている。
ただ、彼女に似た人物の噂は初めてだ。
これまでも、コスプレは見たことはある。
けれど、モデルじゃないかと思うような女の子ではなく、野郎が多かった。
だから、噂通りアコードそっくりなら見てみたい。
実際に見かけたというクラスメートが羨ましい。
なんで声くらいかけられなかったのか、腹立たしい。
自分なら、と思う。
なので、情報収集は当然、だよね。
「秋葉原でよく見かけるの、その子?」
「いや、よくってワケじゃねぇみてぇ」
「あー、昨日そんなカキコあったぜ」
「夕方、ジャンクステーションの近くで声かけられたって?」
「そー、なんか妙な質問されたって」
「ウソ、そいつ超ついてんじゃんっ」
「だけど、テキトー答えてたら捨てられたって」
「いんや、ナンパして逃げられたって」
「私立の、皇子の制服着てたってさ」
一々頷きながら、不思議に思う。
なんで野郎に質問してんだろう。
まあ、自分で確かめるしかないケド。
◇◆◇◆◇
秋葉原の電気街(今やオタク街か)に来るのは久しぶり。
学校から寄り道するにはいい場所だけど、最近の買い物はネット通販で済ませてたから。
それでも、実際に部品や新製品を目の当たりにするとワクワクしてくる。
時間的にはまだ夕方だけど、すっかり暮れてしまった薄暗い空の下ケバケバしいネオンの点る街を歩くのは楽しい。
並ぶ店のいかがわしさや胡散臭さとか、すれ違う人の日常にない格好がどことなく夏祭りの雰囲気に似ているからかもしれない。
今日の目的は人捜し、なんだけど。
うまく会えるとは限らないし、探しながらの寄り道はしかたない。
駅からたっぷり歩いて、ちょっと奥まった路地にある雑居ビル。
その2階がインターネットカフェ、ジャンクステーション。
ちょっと期待して、辺りをうろつく。
20分くらい。
でも彼女らしき人物の影も形も見つけられず、入店。
学校の制服のままだったので2時間しかいられないけど、出入り口の見渡せる席が確保できた。
荷物とコートを一度置いて、飲み物を取りに行く。
席に落ち着き、パソコンを立ち上げると画面にデフォルメされたアコードが笑って迎えてくれた。
現実にこんな子がいたらいいな、と感じる魅力的な笑顔だ。
CGだけどさ。
ジャンクステーションのホームページからアコードの部屋へ入る。
ここは彼女のファンサイトみたいになっていて、個人サイトも登録されてる。
そういったサイトのBBSを覗いてみたけど、昼間にクラスメートから聞いた以上の噂はない。
無駄足、だったかも。
すっかり冷めてしまったコーヒーを飲んで、席を立つ。
支払いを済ませて店をでると、すっかり夜。
もうシャッターを下ろした店も多い。
吹きつける風が冷たくて、耳が痛い。
「寒〜っ」
わざと大きく白い息を吐いて歩き出す。
毎日くれば会える可能性もある。
でも、きっとすぐには見つからないだろうし。
「どーしよ」
白く煙るため息を追って、視線をあげる。
気が滅入るくらい暗い街にいるのに、空は明るすぎて星が見えない。
「なんか、ヘコむよなぁ」
「なんで?」
独り言に背後から女の子の声。
そんなはずない。
でも、ひょとすると。
期待感に振り返った先に、アコードがいた。
似てるなんてもんじゃない。
本人だ。
【続く】
up date:2008/12/04
write by Hamada.M.《蛙女屋携帯書庫》
[http://id54.fm-p.jp/133/ameya385/]
初出:2004/09/12
さいえんすふぁんたしー発行
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2008/12/04(mobile)
(最終更新:2013/09/17)