a-cord
□Life Game 21
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しかし、ベータ版発表の頃には開発チーム随一のプレイヤーに成長し、今では武川など相手にもならない。
元々あった才能以上に、最も多くバトルをし、また見て、勝つ方法を考えてきたのだろう。
だから彼女だけは、レベル8以上のプレイヤーが一定数になるまで、参加させられなかった。
もちろん、その後の特別扱いもない。
ちゃんと最初にデッキを購入し、レベル1からのスタート。
彼女なりのデッキを組み、多くのバトルを経てレベルを上げてきた。
レアカードが貰えるイベントの情報は彼女に甘い姉代わりな人から早めに聞かされているかもしれないが、正規の方法で手に入れているはずだ。
短期間で『L8』の出場資格を得たのも、プリンセスの称号も、間違いなく鈴妃自身の実力と努力によるものだ。
2ターン目で[RAIN-MAKER]は召喚した【蚊柱】を代償に【湖沼の主】の特殊能力『飽食のおくび』で【黒い霧】を無効化しようとする。
しかし[RING]は相手が勝負を仕掛けてきたところを迎え撃ち、逆にダメージを与える戦術を得意としている。
対抗スペル【飢餓】で【蚊柱】を横取りして【ブラックドッグ】の特殊能力発動条件を整える。
ただし、【飢餓】の効果条件により2ターン目の行動は終了となり、武川が決着を予告した3ターン目が始まった。
互いの行動を無駄にしただけに見える前ターンを考慮してか、[RAIN-MAKER]は慎重だ。
カウンターを警戒してか、それとも有効な手札がないのか、【トカゲ忍者部隊ゲッコー】と2枚の伏せカードを出しただけでターンを終了する。
これが最後のチャンスだったのに、という武川の呟きがプレイヤーに届くことはない。
カウンターデッキへの対応策は、徹底して守るか攻めるしかない。
一度、いや一瞬でもその姿勢を崩せば立て直しは難しい。
そして[RING]は僅かな隙や迷いを見逃してくれる甘いプレイヤーではなかった。
空間エフェクト【闇夜】を発動し、自ら【黒い霧】を無効化する。
これで場には効果を失った3種類のカード──クリーチャー【蚊柱】、スペル【飢餓】、エフェクト【黒い霧】が揃った。
これに加えて新たに3枚、合計6枚のカードを除外することで【ブラックドッグ】の特殊能力『スラッシュキル』が発動する。
発動条件の厳しいこの能力には、[RAIN‐MAKER]の対抗手段──2枚の伏せカードなどなんの意味もなさない。
【ブラックドッグ】の特殊能力『スラッシュキル』の効果は新たに除外したカードの種類で決まる。
最も多いカードがクリーチャーなら合計攻撃力、相手LPを削る。
スペルなら任意の効果が発動。
エフェクトなら場に出ているクリーチャーを互いの手札に戻し、アイテムなら任意の効果を常動装備できる。
[RING]が除外したカードは3枚ともクリーチャー。
合計した攻撃力は[RAIN‐MAKER]のメインカード【天水の魔術師】のLPを上回っていた。
たった3ターン。
無傷での完全勝利。
『L8』ではアンティ──ゲーム開始時に互いの手札から無作為に選んだ1枚を賭け、勝者が敗者のカードを手に入れる──ルールが採用されている。
[RING]が得たのは【ウォータークラウン】という水系のレアアイテムだ。
同時に、レベル的には大番狂わせの結果に、武川が覗き見る観戦ルームは騒然としている。
[RING]のデッキ構築センスや戦略は驚異的だ。
知らぬ者もだが、彼女がまだ9才の小学3年生と知る者にとっては、特に。
up date:2008/12/08
write by Hamada.M.《蛙女屋携帯書庫》
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