魔女の箱庭
□序:新しい冒険
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魔女の箱庭
〜 Trinity Garden 〜
〜アルマースの冒険者たち〜
序
新しい冒険
さて、新しい冒険を始めよう。
ここは《白魔女》が創り上げた世界《トリニティガーデン》。
この世界を成す3つの大陸のうち、最も北にある下向きの三角形をした大陸がドリーフックだ。
そのドリーフック大陸の南端、河口洲に建てられた港町アルマースに暮らすライクン家の3兄弟こそが物語の主役。
君たちの分身といったところかな。
まずはライクン家の長女、アインから紹介しよう。
彼女は白金色の髪と飴色の瞳を持つ15才の少女だ。
生まれてから一度も切らずに伸ばし続けている長い白金色の髪は、生まれた時に「《白魔女》の祝福を受けた娘」と周辺の町や村でも騒がれたほど珍しい。
世界の創造主たる《白魔女》にあやかってか、彼女は質素な仕立ての生成の服を好んで着ている。
見た目は慈悲深い女神のようなアインだけれど、その性格はちょっとアレだ。
頭の回転が早く、口が達者で交渉事に長けた参謀役──と言えば聞こえはいいが、ようは小賢しく何事も口先三寸で弟たちに丸投げする。
弟たちにしてみれば、魔女どころか魔王に祝福された姉だろう。
次にアインの弟たち、双子のドスとサンを紹介しよう。
2人共に13才で、兄のドスは短く刈った黒髪と好奇心を湛えて輝く鳶色の瞳をした実に子供らしい、年相応な少年だ。
よく町外れや海岸で馬鹿なイタズラや無鉄砲な遊びをしては母や姉にこっぴどく叱られたり、大きな怪我をしたりしている。
それでもめげずに似たような事を繰り返すのは、良く言えば元気が有り余っている──悪く言えば学習能力が低い、せいだろうか。
けれど明るく大らかな気質は町の誰からも可愛がられる一家のムードメーカー。
ただ本人は背が低いことをとても気にしていて、それらしき事を言われる度に誰彼構わず喧嘩をふっかけては母親や姉に嗜められている。
最後は末っ子のサン。
外面女王な姉と猪突猛進な兄という自己主張の強すぎる兄弟から一歩引いた、13才という歳に似合わぬ落ち着きと諦観を持つ少年だ。
兄のドスより華奢だが背は少しだけ高く、肩まで伸ばした栗色の髪を襟足の辺りで一つに括っている。
そばかすの浮いた白い頬や鋭敏そうな若草色の瞳は利発さを伺わせ、言葉使いも丁寧で優しい。
そのせいか、よくサンの方が兄だと思われてドスが喧嘩腰になるのがお約束だ。
やや押しの弱い所と、兄より細身なことはとても気にしていて、からかわれると静かにだけれど深く傷付いているよ。
こんな3兄弟──つまりは君たちが、これから廻るこの世界のことも少しだけ話しておこう。
魔女も女神も魔王もいる。
でも便利で効果的な魔法なんて誰も使えないし、凶暴な魔物も存在しない。
この世界の旅先で君たちの前に立ちふさがるのは野生の獣か、君たちとは違う正義や倫理観に則って生きている人間だ。
だから、戦う時は考えなければいけないよ。
自分たちか生き残る為にすべきこと。
相手の戦う意味。
そして、最も良い決着を、ね。
知って欲しいんだ。
戦う事の意味と意義を。
勝利と敗北の次にあるものを。
君たち自身の正義を。
そうすれば、素晴らしい出来事が起こるはずなんだ。
だってこの世界には魔女がいる。
世界をさすらう生命を司る女神や、かつて世界を統べた魔王もいる。
この世界を旅するなら、きっといつか彼らに出会う。
その時、君たちは実感するだろう。
ここが《魔女の箱庭》なんだと。
【
1:ハーブと放浪者
へ続く】
up date:2013/07/17
濱田都《蛙女屋携帯書庫》
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(最終更新:2013/09/29)
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