短編小説
□太陽王
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それを知ったもう1人の王子は、この王子とともに女王と話しあうことを決めました。
この王子は、女王も自分と同じように2つの国と民を同じように憂い、救う手立てを考えていると知っていたのです。
王子たちは自らの身分を明かし、女王の居城を訪ねました。
2人の年若い王子を迎えたのは、老齢の女王とその娘である若く美しい姫です。
彼女たちは2人の来訪を心から喜びました。
豊かな土地の王も2つの国の凶事を憂い、使者を遣わしてくれたのだと思ったからです。
けれど、恐れる王子は言いました。
「2つの国に災いをなす魔女よ! 滅びよ!」
「何を言われるか! 女王は我が父王と同じく、自らの国の災いを憂えておられるお方だ。そして我が父王以上に、我らが国の災いにも心を痛めておられるのだ。そのような無礼な言葉を言うものではない」
もう1人の憐れむ王子がすぐにその言葉を制し、女王に伏して詫びました。
「女王よ、我が同胞の非礼をお詫びします。その上で、我が国とこの国の危機を救うべく、あなたのお知恵をお貸しくださるようお願い致します」
王子の言葉に、女王は困りました。
そしてあちらにも、この災厄を治める術がないことも。
「若く賢き王子よ、面をおあげなさい。そして若く猛々しき王子も、そこへお座りください。ようこそ、この荒れた貧しき土地へこられました。私どもにも2つの国と民を救いたい気持ちはございます。けれど、長く年経たこの私にも、天よりの恵みと災いに抗う術はございません」
その時、姫が言いました。
「これはおとぎ話なのですが、2つの国の間、海のどこかに大地を巡らせる秘術が伝えられていると聞いています。天を動かすことが叶わぬならば、大地を動かせばよいのではないでしょうか?」
この姫の言葉に、1人の王子が立ち上がりました。
もう1人の王子を国へ帰し、このことを父王に伝え、2つの国が共に民を治めていくことを願いとして託します。
そして、姫の言葉を頼りに、大地を巡らせる術を求めて海へと旅立ちました。
それから、また長い年月が流れました。
いつからか、豊かな土地にも荒れた土地にも同じように、明るく天の炎が照らす時と、穏やかな暗い空に覆われる時が交互に訪れるようになっていました。
人々は旅に出たまま戻らぬ王子が大地を巡らせる術を見つけ、皆を救ってくれたのだと噂しました。
そして、その王子を天の炎を統べる王──太陽王と呼ぶようになっていったのです。
こうして世界は始まったと、古い物語は伝えているのです。
*この短編はDeux Soleil様に捧げました。
‡濱田都‡
【了】
濱田都《蛙女屋携帯書庫》
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初出:2004年9月30日(書き下ろし)
最終更新:2009/01/07