中編小説
□(有)魔法少女舎
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許v@少女舎〜 5 〜
数ヶ月前までは自他ともに認める、どこにでもいる平凡な高校一年生、だった。
日野心太郎という名前はちょっと時代錯誤で、逆に新しいかも。
自分の変わったところなど、それぐらい……だと思っていた。
ちょっとした好奇心から自称、魔法少女を呼び出してしまうまでは。
ドロシーと名づけさせられたその魔法少女(自称)は冷やかしの要望を上回る、巨乳でロリ顔な超ド級の天然ボケのドジっ子だった。
ここでそのお約束で被害甚大なエピソードを一々紹介するのも馬鹿らしい。
とにかく、あまりの常識外れぶりにあきれ果て、数週間の教育とシミュレーションのお陰で最近ようやく外出許可を出せるくらいにはなった。
まあ、学校帰りに友人とコンビニ前でたむろっていたところへ、突然、落ちてくるというありえない登場の仕方をしてくれたのだから、その判断は甘かった。
なんか、今、大ピンチな気がする。
いや、ついさっきまで水元さんとドロシーはにこやかに挨拶を交わしていた。
最後にあの阿呆少女がとんでもねえこと言い出すまでは。
「ドロシーは心太郎くんのものですから〜」
その瞬間から水元さんは表情の抜け落ちた笑顔でドロシーの手を放そうとしない。
それどころか強く握り締めているような気がする。
縋りつきたい頼みの綱、武田と細川は手にしたペットボトルごと脱力していて、色々だだ洩れ中。
まさに「どうすれバインダー」な状態だ。
「どしましたか?」
小首を傾げるこのドアホ少女が憎くてたまらない。
たった今、自分が発した言葉の重大性を頼むから察してくれ。
それか、お前にとっては平常なことは世の中では異常なのだと理解しろ。
マジで。
「心太郎くん、なんか困ってますか?」
両手をがっしりと氷の女王に掴まれているにも関わらず、本気できょとんとしてるコイツがある意味コワイ。
仕事きっちり過ぎだぜ、魔法少女舎。
物事ってのはアレだ。
過ぎたるは及ばざるが如し。
ここまで伝票通りに天然でなくとも良かったんだ。
なんて今更嘆くが、やってしまったことは取り返しがつかないから後悔がつきまとう。
そして、過去に捕われてしまえば、未来を好転させるチャンスも失う。
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