中編小説

□(有)魔法少女舎
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許v@少女舎

〜 2 〜



 日野心太郎、高校1年生。
 ついさっきまで、人生は平凡極まりないもの。
 それが、妖しげなDMなんかに興味本位と悪戯心なんかで手を出したのが間違いだった。
 けれど後悔なんてものは、なんの役にも立ちはしない。
 今、目の前に出現した1年間の居候を宣言した魔法少女なる存在に対しては。

「……君、は?……」

「はい。魔法少女舎から派遣されました魔法少女です」

 不思議なセリフを堂々と言ってくれる。
 いかん。頭痛がしてきたぞ。

「どうしました、心太郎君?」

「……あのさ」

「はい」

 ほんの少し首を傾げる仕草は可愛らしい。
 青みがかった長い髪がふわりとゆれるのも。
 だけど、かわいいからって何もかも許されるほど現実は甘くない。
 はずだ。

「折角来てもらってなんだけど、1年居てもらえない」

「えぇ〜っ! なんでですかーっ!」

 盛大に驚いた魔法少女は胸元から伝票の控えらしきものを取り出し、読み上げてくれる。
 
「日野心太郎くん、15才。希望は魔法少女。オプションはロングヘアー、天然、巨乳で間違いないですよねえっ?」

 そうか。
 そんなオプションつけてたのか、オレ。
 思わず目線を下げると伝票どおりの巨乳が揺れている。
 いや、そうじゃなくて。

「その伝票は確かにオレが書いた。でも、キャンセルさせてくれよ」

 キャンセルできるのか分からないが、クーリングオフ制度はあるはずだ。
 それにオレは未成年なので、両親の承諾もなく交わした契約は破棄できる、と思う。

「……そ、そんなぁっ」
 うるりと大きな瞳に浮かぶ涙の粒からは敢えて視線を外し、心を鬼にして続けた。

「悪いけど、親に話すわけにはいかないだろ」

 例え、理由を話したとしても、両親が信じてくれるとは思えない。
 もちろん、黙って1年間も魔法少女を養うことも無理だ。
 可哀相だが帰ってもらうしかない。

「あ! そういうことですね。分かりました。任せてください」

 なにやら頼もしく請け負ってくれた魔法少女は、どこから出したもんだかいわゆる魔法のステッキらしきものを握っている。
 まさか、と思う間にそのステッキを振り上げ。
 


 
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