ゼルダの伝説短編夢小説

□安らぎの一時
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リンクとノルンは休息の為にスカイロフトに数日留まる事にした

どんなに事を急いでいても休養は大切だ
休める時にしっかり休んでおかないでいざという場面で動けない、なんて情けない事この上ない
もし、運悪くギラヒムと遭遇し、戦いになったらそれこそ命取りになる

彼は魔王の右腕であり、魔物を統率する魔族長を名乗るだけあって、その実力は並大抵ではない

とにかく何があっても対処出来るように万全の態勢で挑むのがベストだ



*‥*‥*‥*
空がオレンジ色に染まる夕暮れ時、大地からスカイロフトに戻ってきたリンクとノルンはまず、お風呂に入ってさっぱりしようという事で意見が一致した

「じゃあ、お風呂場が空いてるか見てくるからリンクは先に部屋で休んでて」

ノルンは階段を上がり、奥にある浴場へ

騎士学校の浴場は生徒や教員がそれぞれ、使用出来るように、1日に数回ある掃除の時間を除いては基本的に24時間解放されている

なのでどの時間帯でも先客がいる事も珍しくない


扉に下がっているプレートを見ると、どうやら誰も使っていないようだ
鍵もかかっていない
一応、念の為に中を覗けば誰もいなかった

ノルンは軽い足取りでリンクの部屋に向かった
数回、扉をノックして中へ入る

「リンク、お風呂空いてたからお先にどうぞ」
「僕は後でいいからノルンが先に入っておいでよ」
「え…でも、リンクの方が疲れてるだろうし…」

ノルンはそう言ってリンクに先を譲ろうとした

これでもリンクと一緒に騎士学校で剣の訓練を受けた身だ

力は劣るが、剣はそれなりに使いこなせるし、雑魚相手なら十分に渡り合える

しかし、強敵との戦いになった時やその場の状況によってはリンクのサポートにまわる事も多かった

先陣を切って戦うノルンの方が疲労も溜まっていると思ったからだ

「でも、じゃないよ。こういうのは普通、女の子が先でしょ」

リンクはノルンの頬についた汚れを拭う

「あ……」
「ほら、早く行っておいで」

とリンクはノルンの背中を軽く押す

「…うん」

ノルンは渋々頷いてリンクの言う通りにした



*‥*‥*‥*
「はあ…気持ちいいー…」
身体を綺麗に洗い流し、湯船に浸かる
熱いお湯がじんわりと身体の疲れを取っていく

「………」

ノルンはぼんやりと先程のリンクとのやり取りを思い出していた

「意識、し過ぎだよね……」

ノルンは頬に触れた

他の人なら何でもない事でも好きな人が相手だと、どうにも意識してしまう

例えば手を繋いだ時
重なり、触れ合った場所から彼に伝わってしまっているんじゃないかってくらいドキドキしてしまう

あとは目が合った時
真っ直ぐで澄んだ蒼い瞳に見つめられると、つい恥ずかしくなって目線を逸らして俯いてしまうけれど
彼はいつまでもこちらを見ているのだ

何故分かるかというと、それはつい最近の事
しばらくして、もう見てないかと思って顔を上げたら満面の笑みでこちらを見ていたのだ

あまりの恥ずかしさに空へダイブしてロフトバードで逃げたくなった、というか実際に逃げた

それはもう全速力で

リンクに見つかりそうにもない離れの小島を選んで隠れていたのだが、あっさり見つかってしまい
どうして居所が分かったのかと訊ねたら、リンクはこう答えたのだ

『ノルンの事なら何でも分かるから』

全然理由になっていなかった

他にもまだまだあるのだが、とにかく挙げていったらキリがない

けれど、それだけ意識してしまう程に彼の事が好きなのだとノルンは改めて思った



*‥*‥*‥*
浴場から出たノルンはふう、と息をついた
考え事をしながら湯に浸かっていたら、時間が大分過ぎてしまい、すっかりのぼせてしまったのだ

「ごめんね、リンク。お待たせ」

部屋に入るとファイがリンクの傍にいた
どうやらファイと会話をして時間を潰していたようだ

リンクはこちらを向き、お帰り、と言った瞬間、ぼうっとした様子で固まってしまった

「…………」
「リンク?どうしたの?」
「え?あっ…ごめん、何でもないよ」
「大丈夫?やっぱり疲れてるんならリンクが先の方が良かったね」
「いや、別にそうじゃないんだ」

慌てたようにリンクは繕う
ノルンはいささか不審に思ったが彼が大丈夫だと言うならそれ以上気にしない事にした

「あ、ノルン。今夜は一緒に寝よう。だから、自分の部屋に帰らないでここにいてね」
「うん」

ノルンは頷いた

「じゃあ、待っててね」

リンクはノルンの額に軽くキスをし、行ってくるね、と部屋を出て行ってしまった

ノルンはふらふらとリンクのベッドに座り、溜め息をついた

「……リンク…」

ノルンは両手で額を押さえた

「ノルン様?どうされました?」

様子が普段と異なるのが気になったのか、ファイが窺うようにノルンの顔を覗き込む

「あ…ううん、何でもないの」
「そうですか」

ノルンが平気だよ、と言うとファイは彼女から離れてそれ以上追及しなかった
が、痛い視線がビシバシこちらへ送られてくる

無言の圧力のようなものをひしひしと感じる

(………何だろう、この話さなくちゃいけないような空気は)

耐え兼ねたノルンは観念したかのように口を開いた
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