ゼルダの伝説短編夢小説

□甘えたがりな彼
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自分もわりと甘えん坊の部類に入ると自覚している

一人でいるのは寂しい、というか気心が知れた相手と一緒にいるとこう、安心出来るというか

だから小さい頃からいつも姉のゼルダや幼なじみのリンクにくっついていた

成長した今ではあまりない…が、時々甘えたくなる時もある

リンクは異性で想いを寄せている相手、という事もあり、恥ずかしかったので、甘えるのはほとんど姉にだが
姉はしょうがないわね、と言いながら満面の笑みで思い切り甘やかしてくれていた

けれど、リンクもそんな自分に負けず劣らず、だと思った



*‥*‥*‥*
今、ノルンは困っていた
本気で困っている訳ではないが、このままでは恥ずかしさのあまりどうにかなってしまいそうだ

それもこれもリンクが自分を抱き締めて離してくれないからで

先程まで普通に会話していたのに、気が付いたらこんな状況になっていた

後ろからぎゅうっと抱き込まれ
擦り擦りと甘えるように頬を寄せられたり、手を握られたり…
とにかくリンクにされるがままになっていた

恋人同士になってからというもの、こうしてどちらかの自室で二人きりになるとリンクはよくこうして甘えてくる

甘えてくれる事自体はとても嬉しいのだがやっぱり恥ずかしい

「ねえ、リンク…」
「んー?」

ノルンはリンクの腕の中でもぞもぞ動いて彼を見上げる

「そろそろ、離れてくれない…?」
「嫌だ」

即答だった
そしてきっぱり却下された

「ノルンって柔らかくて暖かくて気持ちが良いんだよね。それにこうして君を抱き締めてるとホッとするし」

やっぱり好きな子だからかな?

何気ない顔で自然にさらっと言われて、ノルンはじわじわ顔に熱が集まるのを感じた

リンクはいつもこうだ

こちらが恥ずかしくなって赤面してしまうような事ばかり言う
さらにそれは特に狙っている訳ではなく、彼の本心からきているもので
当の本人は無自覚だからかなり質が悪い

どきどきしぱっなしで心臓がもたないから止めて欲しいと思っても残念ながらその術がないのだ

「だから僕としてはずっとこうしてたいな…。あ、もしかしてノルンは僕に抱き締められたり、触られたりするのは嫌?」

しょんぼりと悲しげに長い耳が垂れ下がる

(うう…)

そんなリンクを見ていると胸に妙な罪悪感が生まれると同時に何だか可愛いかも、とも思ってしまう
例えるなら子犬がこう、しゅん、としている感じだ

(って、それ所じゃないよ!)

このまま放っておいたら泣き出してしまいそうなリンクに慌てたノルンは違うよ、と首をふるふる振った

「嫌とかそういうのじゃないの!リンクにぎゅって抱き締められるのは大好きだよ!ただ、恥ずかしくて、胸がドキドキし過ぎて、おかしくなっちゃいそうで…」

誤解を解くべく必死に弁解するものの、言っているうちに段々恥ずかしくなってきてしまい
最初は勢いよく切り出したが、最後は声が小さくなって、口がもごもごしてしまう

「…良かった。僕だけノルンの事好き過ぎて一人で突っ走ってたのかと思ってたよ」
「そ、そんな事ないよ。私だってリンクが好き、大好き。…恥ずかしいけど、リンクが喜んでくれるなら…もっと…その…」
「…ノルン、可愛い」
「あ…」

リンクは両手でノルンの頬を包み、口付けた

「んっ…」

溶けるように甘い口付けの合間に優しく髪を梳くように撫でられる

リンクにこうされていると、とても心地好くて、幸せな気分になる

甘やかされているのは本当は自分なのかもしれない
ノルンは思った

「んっ、…ふ…あっ…」

ゆっくりと互いの唇が離れていく
とろん、とした潤んだ瞳がリンクをじっと見つめる

「ノルンってどうしてそんなに可愛いんだろう…?」
「…?」

首を傾げるノルンにリンクは苦笑いをし、再び彼女を抱き締め、頬を擦り寄せた

「ふふ、くすぐったい」

ノルンはふわふわと少し癖のある髪を撫でる

「リンク、何だか小さな子供みたいだね」
「えー?ノルンだって僕と似たようなものじゃないか」
「え?そう、かな?」
「そうだよ。小さい頃からいつも僕に…甘えて…くっついて…」

こくり、こくり、とリンクの頭が船を漕ぐ
そしてとうとうノルンの肩に顎を乗せて目を閉じてしまった

「リンク?」
「う…ん…僕達は…ずっと一緒…だよ…」

それからはいくら話し掛けても返ってくるのは規則正しい寝息だけだった

「…寝ちゃった」

頬を人差し指で突っついても反応はない

元々彼は寝付きは良かったが、いくらなんでも早すぎではないか
しかも話している最中に眠ってしまうなんて
余程疲れていたのだろうか

「そうだよね…色々大変だもんね……」

まだ大地を捜索し始めた頃は慣れない事だらけで心と身体に疲労が溜まっていたせいで眠りも浅く
何かにうなされているかのように表情も固く、強張っていた

しかし、最近では以前と変わらない穏やかな寝顔でしっかり睡眠も取れている

ある日良かったね、と言ったノルンにリンクはこう返した

『辛い事はたくさんあるけど大好きなノルンがいつも僕の傍にいてくれるから。こうやって心を許せる人がいるから安心出来るんだ』

甘えて、甘やかされて
そんな関係が嬉しくて
彼と時間を過ごせる事が幸せだった

こうしている間にも世界は平和を脅かす魔王復活の危機が迫って大変で
早くゼルダに、大切な姉の元へ行かなければいけないのに、不謹慎だとは分かっている

けど、こうして休息を取っているほんの少しの間だけなら許されるだろうか…?

ノルンは自分を抱き締める腕の中の温もりに幸せを感じながら目を閉じた



≪甘えたがりな彼ーEND≫

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