ゼルダの伝説短編夢小説

□休戦協定
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暖かな温もりに包まれ
手のひらでゆっくり撫でられていたかと思えば、さらさらと髪を梳くように優しく撫でられる

ああ、このまま醒めたくない

もう少し、もう少しだけ…

猫が甘えるように頭を擦り付ける

すると上からくすくすと笑う少女の声が聞こえる
そこでぱちり、目を開けた

「おはよう、ギラヒム」

見上げれば、にこにこと笑顔でこちらを見下ろすノルンと目が合う

そうだ、とギラヒムは記憶を手繰り寄せる

フィローネの森で偶然ノルンに会ったのだ
普段は必ずリンクと二人で行動しているので一人でいるのは珍しい

今日は部下の様子を見に来ただけなので戦うつもりはなかった

彼女もこちらに敵意が無いのが分かったのか、警戒する事なくこちらへと寄ってきた

最初は普通に会話をしていたのだが、ふと悪戯心が生まれてこんな事を言ってみた

膝枕をして欲しい、と

案の定、彼女は驚いて顔を真っ赤にして黙りこんでしまった

彼女は表情が豊かで、特に困った顔や赤くなった顔を見るのは非常に面白い

しばらくして、冗談だよ、と言おうとしたのだが
気付いたら頭が柔らかな太股の上にあった

今度はこちらが驚く番だった

彼女は本当に膝枕をしてくれたのだ

今日だけだからね、と恥ずかしそうに彼女は言った

人肌の温もりに包まれ
魔力の減少による疲労も相俟って意識が閉じるのは容易かった


ーそうして今へ到る


あまりの心地好さに大分眠ってしまっていたようだ
先程までは昇ったばかりだった太陽が上の高い所に位置している

「起こしてくれても良かったのに」

ギラヒムは起き上がりながら言った

「だって、気持ち良さそうに眠ってたから」
「けど、あまりワタシに構っているとリンク君がうるさいんじゃないかい?」

敵としてではなく一個人として注意を促す

「ワタシの事を快く思っていないみたいだし」

一見ぼんやりしていて色恋に疎いかと思えば、とんでもない
意外と嫉妬深いのだあの勇者は

事ある毎にノルンにちょっかいをかけるギラヒムをリンクは激しく敵視している

見かけによらずとはよく言ったものだ

「きっと、大慌てで今頃こちらに向かっているだろうよ」

ギラヒムはニヤニヤと笑いながらノルンに顔を近付ける

ノルンは強い気配を放っているので居場所を容易に察知出来る
あの女神の剣もこの場所は既に特定しているだろう

「リンクなら今ようやく起きた頃だと思うからそんなすぐには来ないよ」
「…って、もうお昼じゃないか」
「リンクは元々お寝坊さんだし、疲れてるみたいだったから今日はゆっくり寝かせておいてあげようって思ったの」
「で、一人暇をもて余した君はフィローネの森に来た、と」
「封印の地の様子が気になったのと、どこかの誰かさんがまた悪さしてないかなー、とか」

ちら、と悪戯っぽい笑みを浮かべ、ギラヒムを見た

「心外だね。ワタシがいつだって善い事をしているつもりだけど」
「それは魔王にとってでしょ!?いっつも私とリンクの邪魔ばっかりしてるじゃない!」
「それはお互い様だろう?みすみす君達の思い通りになっては困るからね」

それぞれ相反する意志を持って目的を成そうとしているのだから、衝突するのは当然の事だった

もっともなギラヒムの言葉にノルンはそれ以上何も言えなかった

「…でも、ギラヒムに会えて良かった」

今日は柄にもなく驚く事ばかりだ
普段自分がやられている分の仕返しなのか?

とにかく目の前いる少女はさらにとんでもない事を言った

「封印の地に用事があったのは本当。けど、ギラヒムにも会いたかったの」
「まさか…ノルン、ワタシの事がー」
「ち、違うよ!!あくまでもギラヒムは敵なんだから!勘違いしないでっ。私は昔からずっとリンクだけなんだから」

ノルンは力一杯否定した

「ただ…ギラヒムの事、放っておけなくて。自分でもよく、分からないけれど、気になるの…。本当に変だよね。ギラヒムは敵なのに」

敵や味方
好きか嫌いか
そういった事を抜きにただ純粋に気になるだけ

そんな葛藤が少女の言葉と表情から窺えた

「私、そろそろ帰るね」
「…………」

ギラヒムは立ち上がり、空へ帰ろうとするノルンの手を掴んで引き寄せた
ノルンはバランスを崩し、倒れ込むようにギラヒムの腕の中に納まる形になる

「ギ、ギラヒム!?」
「折角来たんだ。ゆっくりしていきなよ」

ノルンは頬を膨らませた

「ギラヒムって何考えてるか分からない…」

むやみやたらに構うなと言ってきたわりにはこうして向こうから構ってきたり

いまいち彼の言動に掴み所がなかった

「もちろん魔王様とノルンの事に決まっているじゃないか」

そう言ってギラヒムはノルンの頬にキスをした

「な、なっ…」

みるみるうちに彼女の顔が真っ赤になっていく様は見物だった

「本当はこちらにしたかったけど、怒ったリンク君は何をするか分からないからね」

人差し指でノルンの唇をなぞる

「そういう問題じゃないよ!!ギラヒムの馬鹿ー!!」

ノルンの叫びが森中に木霊した

「もう、信じられない!馬鹿っ、変態っ…」

頬を膨らませるノルン
かなりご立腹のようだ

が、人間の少女ごときが怒ったところで恐怖を感じるどころか、可愛らしいと思えてしまい笑ってしまった

「………ギラヒム?」

じろりと睨まれたが、やはり、怖くはなかった

さて、どうやってご機嫌をとろうか?


ギラヒムは楽しげに口元を吊り上げた
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