第1部
□プロローグ・蒼い空の下で
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蒼空の下、すうっと大きく息を吸い込んで少女は謳いはじめた
高く澄んだ声が美しい旋律を紡ぐ
歌詞はないが優しく、聞く者の気持ちを穏やかにする旋律だった
少女を中心とし、旋律の波紋はゆったりと辺りに広がっていく
時折、風に吹かれて緑の草が揺れる
このまま時が止まってしまえばいいのに
そうすればこの瞬間の幸福感をいつまでも閉じ込めておける
後ろでモトラドに腰掛け、少女の後ろ姿を見つめていたもう一人の少女は思った
彼女に出会えた喜び
共に歩む事の喜び
それらを感じるなんて以前の自分からは想像など出来なかったものだ
彼女と出会ったばかりの頃は何もかもが手探りで
どう接していいのか戸惑うばかり
張り詰め過ぎて、すれ違う事も多くあった
良い面も、嫌な面も、たくさん見てきた
これまで一緒に旅をし、お互いの色んな面を見て、ぶつかり合った
不満さえぶちまけた
だからこそ知る事が出来た
お互いが抱えているもの
心の奥に大事に大事に秘めていた想いを
言いたい事を言い合い、本心をさらけ出してしまい、隠すものがなくなった今、この瞬間、少女に対して一途な気持ちが流れている
それはきっと相手も同じ事だろう
自惚れでもなんでもない
お互いを見せ合って
お互いを承認した
だから思う事が出来る
今の自分達は世界で一番の強い絆で結ばれているのだと
《プロローグ・蒼い空の下で‥END》