第1部
□心と記憶繋ぎ止めるカタチ
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城門をくぐると街独特の賑わいがキノ達を迎えた
門番の話によるとこの国は交易の中心となっている場所らしい
この辺りは国が比較的近くに点在し、この国がちょうどその中心に位置しているからかそれぞれの国から出た商人が多く立ち寄り、自然と豊かになったそうだ
市場通りは毎日お祭りのように露店は並び、賑やかだとか
「露店か―‥きっと珍しい物とかたくさん売ってるんだろうね」
サヤは早速目を輝かせ、そわそわと身体を揺らしていた
期待を裏切らない仕草っぷりにキノは顔を綻ばせる
どう見ても同い年くらいなのに彼女の方が幼く感じてくるから不思議だ
そんな無邪気さがキノを惹き付けてやまない魅力のひとつなのだが
*‥*‥*‥*
とりあえず甘い物が食べたい、というサヤの要望で適当な露店でマドレーヌのような焼き菓子を買ってそれを食べながら市場を周った
日用雑貨、家具をはじめ、宝石や服に食料…
これなら何でも揃ってしまうね、とキノ達は楽しそうに話しながら店を見学した
途中、細工の施された装飾品を見つけてエルメスがサヤとキノに勧めたが、サヤはかさ張るからという理由で却下した
キノも似合わないと付け足したうえで眺めるだけだった
ただ最初に買った焼き菓子は美味しかったのでいくつかまとめて買っておいた
日持ちするそうなのでしばらくはキノ達のおやつになるだろう
『はぁ…そんなんじゃ二人とも彼氏できないよ?』
「彼氏なんていらないもん。ねーキノ」
「ああ」
色気より食い気の二人の未来は暗雲だ、とエルメスは嘆いた
勿論キノ達は聞く耳持たなかったが
「さて、次はどこに行こうか」
「ん―…きゃっ!?」
サヤから短い悲鳴が上がる
突然の風が市場を駆け抜けたのだ