夜の暗闇を明るく優しく照らしてくれる月
その周りに散りばめられた星はまるで宝石のよう
勿論、手を伸ばしても届かない

小さい頃はいつか届くんじゃないかってよくはしゃいで
夜更かしして怒られた事もあった

「ふふ」

けど、母も子供の頃は同じ事をしていたと兄から聞いて
更には兄も同じだったらしくて

結局色々あって最後は笑い話になってしまったのを思い出して、笑みが零れる

「また思い出してた?」

隣で一緒に星空を見ていたキノが声をかける
私はうん、と答えた

「こうしてね、手を伸ばせばあの星に届くんじゃないかって小さい頃は思ってたなあって」
「サヤらしいね」

キノは静かに笑った
時々思い出した昔話をキノは楽しそうに聞いてくれる

けれど本当は辛い想い出が多い人達の話を聞くのはそれこそ辛いのではないかと思ってキノに聞いてみた

キノはそんな事はないよと言った後でこうも言ってくれた

『サヤの大切な人達の事だから』

彼女の優しい言葉に嬉しくて盛大に泣いてしまったのは記憶に新しい

「……」
「サヤ?」

星はどんなに手を伸ばしても届かないけれど―

彼女にだったら届く
こうして手を伸ばせば
お互いの体温が混ざり合うくらい近くにそっと抱き寄せてくれる

とろけてしまいそうなくらい甘やかされて
ああ、また夜更かししてしまうんだろうな
でも、キノと一緒ならいいよね?
私は唇に降る心地好い温もりを感じながらゆっくり目を閉じた





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