【罪言葉】

コツコツと私の足音だけが廊下に響いた。

「鳴海さん、また来ちゃいました」

目的の部屋の扉を開くと案の定あの人は苦い顔をした。予想通りの反応に思わず笑みが溢れた。


「…アンタ仕事が忙しいんじゃなかったのか?」

「忙しいですけど…まだ私がするまではないので♪それに朝方に戻れば大丈夫ですから」

興味なさげに私の話を聞くと先ほどまで書いてたであろう楽譜に目を移した。

「…大切な休みの日くらい家でゆっくりしたらどうなんだ?」


「その大切な休みの日にせっかく会いにきたのに仏頂面はないんじゃないですか」

ぷぅ、と頬を膨らます。

「別に俺に会いに来いとか言ってないだろ」

確かに…と言い返す言葉が見つらず鳴海さんが一生懸命に書いてた楽譜を覗きこんだ。

「…新しい曲を作っているんですか?」

「あぁ、だけど全然終わりがみえないんだ…」

嘲笑気味に笑った後、鳴海さんが持っていたペンが左手から落ちた。

「最近動かなくなる間がだんだん縮まってきたんだ」

鳴海さんの動かない手を見ると胸が締め付けられた。


「…進んで…きてるん、ですね」

「…あぁ、それより今日は何しにきたんだ?」

重たくなった雰囲気を察してか、鳴海さんが話題を変えてきた。

今まで空気を変えるのは私だったのに…

「忙しくなりそうなので鳴海さんに会っておきたかったんです」

「あんた…本当に何の仕事してんだ?」

「それはあれですよ企業秘密です♪」

あの、最後の別れの時に話したことを再現してしまい2人して笑ってしまった。
それから色々な話をしているといつの間にか夕陽が沈みかけていた。


「では、そろそろ飛行機の時間なんで失礼しますね」

「あぁ」

ドアノブに触れた瞬間
またしばらく会えないと思うとドアを引けなかった。

「?どうしたんだ?」

不思議に思ったのか鳴海さんが問いかけてきた。


ー今日、来た本当の理由を言わなきゃ絶対に後悔する…ー

震える手を押さえ鳴海さんに向き直った。


「鳴海さん…私本当に貴方が大好きです!!本当は仕事なんか行かず鳴海さんの傍にずっとずっと居たいんです!」

人前で泣くのなんて一体どのくらいぶりだろう

泣きじゃくる私に鳴海さんは一瞬驚いたようだが、すぐに優しい笑みを浮かべると私を傍に呼んだ。


傍に行くと腕を引っ張られ鳴海さんの腕の中にいた。

「…ありがとう」

一言いうと鳴海さんは私の肩に頭を預けた。

表情は見えないけど震えているのが分かる。

私は残酷なことをしたかも知れません

ずっと…なんて一番残酷な言葉。

★あとがき★
遅くなり本当に申し訳ありません!!
すごく暗いうえに悲恋に近いですね;;

歩ひよは悲恋にもなりそうですし幸せにもなりそうですね!

リクエスト本当にありがとうございました!!

筆記
2010/12/4
風樹


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