secret・room

□秘め事
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 「エルーって、見た目清純なのに、夜はすごい淫らになるよね…」

 唐突なキリの言葉にエルーは目を丸くして、「なっ!」と、声を零した。


 「夜の営みなんて、全然わからないです。なんですか?それ?…みたいな顔しといてさ〜」

 「…なんですか」

 「しっかり求めてくるよね」

 「してないですっ//!!」


 じとりと横目でエルーはキリを睨みつけるが、キリはものともせずに平然と会話を続けていった。
 しかもさらに、爆弾発言を口にし出して…。


 「『もっ…、キリさ……ぃれて…くださぃ……』って、昨夜……「きゃあぁぁっ///!!」


 意地でも認めたくなかったが、一句、一句、一音、一音までしっかり復唱されて、エルーは慌ててキリの言葉を遮った。


 「ほんっと、シスターがこんなに淫乱でいいの?」

 真っ赤な顔をして、肩で息をついているエルーを眺めながら、キリはニヤリと意地悪く笑った。

 「いっ!…ら…ん…」

 キリの台詞にまた叫びそうになるがなんとか堪え、キリを睨みつけた後、エルーはしかめっ面を作って、顔を逸らした。


 「…誰のせいですか…」

 頬を膨らましてぼそりと文句を呟く。


 「ん〜……」

 考えている声を漏らしながらキリはちらりとエルーを見やる。


 「オレ…?」

 そして、ひょっいと、エルーの顔を覗き込んだ。

突然のキリの顔のアップに、エルーの身体が跳ねる。


 「だったら言わないでくださいよ…、変態っ…!」

 ぐいっと顔を片手で押し返しながら言葉を突き付ける。


 「変態ってヒドクない?」

 「変態じゃないですか…」

 「…まぁ、そうなんだけどね…」

 「…!認めるんですか!?」

 反らしていた顔を、返事に驚いて向けてくるエルーにキリは苦笑いを浮かべた。


 (…自分で言ったくせに…。しかも、怒っていたこと忘れてるっぽいな、これ…)


 しだいにおかしくなってきて、くすくすと笑いだす。
それにエルーは顔をしかめさせた。


 「なに急に笑ってるんですか…変態…」

 (あっ、思い出したみたい)

 「うん…まぁ…」

 (あんたが可愛いから……)


 「…なんて言えないよな…」

 「?なんですか?今なにか言いましたか?」

 ぼそりと呟かれたキリの声は小さすぎてエルーの耳には届かず、僅かな音を拾ったエルーがキリに尋ねる。


 「ん〜…エルーが淫乱だってこと、オレだけが知っていればいいかなって。」

 考えるような素振りでこぼした後、キリは不意に腕を引いて、エルーを腕の中に閉じ込めた。


 …まぁ、そんなこと…、オレ以外の奴にはさせないけどね……

 そしてエルーの耳元で囁く。

 エルーの顔が、ポンッと勢いよく赤くなった。
照れ隠しにキリの胸に顔を埋める。

 キリが優しく抱きしめてきてくれて…その体温の心地よさにエルーが酔い始めた頃…。


 「と、言うわけで…今晩いい?」

 囁かれたキリの言葉に、エルーの瞳がパチリと見開かれる。

 「何がと言うわけなんですか…!!」

ぐいっとキリの胸を押し、身体を離す。

 「だめ?」

 下からキリはエルーの顔を覗き込む。

 「昨夜もしたじゃないですか!!」

 「そうだけどね…で、いい?」

 しつこく聞いてくるキリにエルーは小さくため息を零した。

 「…だめって言ってもどうせするくせに……」
 
 「まぁそうなんだけどさ…。一応確認ってやつ?一度でいいからエルーから了承を得てから行為に望んでみたいというか…」

 「………」

 得意げに微笑むキリに口を閉ざすエルー。


 「で、やっぱり答えは…だめ?」

 そんなエルーを再び引き寄せて、耳に囁きかける。


 「…だめ……」

先ほどと同じ答えを口にするエルーに、今度はキリがため息を吐いた。
 エルーの肩を掴んでいたキリの力が弱まった……時。

 トン…と、エルーがキリの胸に抱きついてきた。


 「えっ…?」


 ぎゅぅっと、背中に回されるエルーの腕の感触に思わずキリは声を漏らす。
あまりの突然さに、キリの顔が赤くなっていく。


 「…だめ、じゃないです…。抱いてくださぃ…」

 「っつ!!」

 「…こんな恥ずかしいこと…口にするの…キリさんの前だけですからね…。」

 「…私だって…、キリさん以外の人になんて…触れさせたりしないです…キリさんだけにしか…許したりしませんから…」


 そして僅かに聞こえてきたエルーの言葉に、キリは顔を片手で抑え込んだ。


 「あ〜参りました。…マジで降参。」
 
 「ふふ、何ですか、それ。」

 
頭上から降ってきたキリの声に、エルーはくすくすと笑みを零した。
自分の腕の中で笑っているエルーにキリは苦笑いを浮かべる。


 「…エルーには敵いません。」

 (先に惚れた弱みってやつ?)

 
ちょっと悔しくなって、エルーの背中に腕を回し、力強く胸に押しつけた。
エルーがぷっと声を漏らすが、キリは力を弱めず、そのままの体勢でエルーの耳に唇を寄せた。


 「…とりあえず、今晩覚悟していろよ?」

 そう耳に流し込めば、ほんのり朱に染まっていくエルーの耳。
軽く口づけて、さらに赤くなっていくのを眺めながら、キリは笑みを落とした。


 少し意地悪い顔で見下ろしてくるキリの顔を見上げながらエルーは、どうしてこの人にいつも勝てないのだろう、なんて思っていた。

 キリはキリで、自分の前でだけ淫らに咲いてくれるエルーにどんどん溺れていって……


 もう離してやれそうにないな…なんてことを思っていたりした。



 (いつか、キリさんに勝てる日が来るのかな…?
…勝てなくてもいいから…、ずっと、キリさんの傍に居たいな…なんて…。)


 (我が儘な願い事・・・)

頭に浮かべた想いに恥ずかしくなって、エルーはキリの胸に顔を埋めた。
その時、エルーの手は…無意識にキリの服を強く握っていた。

 …まるで離れたくない…と、言っているみたいに…。





 一方キリは…、

 (離してなんかやらないけどね…。
もうエルーはオレのもんだし、他の奴になんて絶対に触れさせないってーの。)

 (ふわふわな水色の髪も…柔らかな肌も…甘い声も……すべて、全部全部、オレの…)

 日に日に強くなる独占欲。
エルーに知られたら…エルーはオレを怖がったりするかな…?勝手に所有物扱いしないでください!…なんて怒るかな?
 
 離れていかないように、エルーを強く抱きしめる。

強く、強く…エルーが逃げていったりしないように…。
腕の中に閉じ込める。



 
 (( 早く…夜がくればいいのに…… ))



 抱きしめあいながら、互いにそう思ったのは、心の中の秘め事。


End.



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