secret・room
□秘め事
1ページ/2ページ
「エルーって、見た目清純なのに、夜はすごい淫らになるよね…」
唐突なキリの言葉にエルーは目を丸くして、「なっ!」と、声を零した。
「夜の営みなんて、全然わからないです。なんですか?それ?…みたいな顔しといてさ〜」
「…なんですか」
「しっかり求めてくるよね」
「してないですっ//!!」
じとりと横目でエルーはキリを睨みつけるが、キリはものともせずに平然と会話を続けていった。
しかもさらに、爆弾発言を口にし出して…。
「『もっ…、キリさ……ぃれて…くださぃ……』って、昨夜……「きゃあぁぁっ///!!」
意地でも認めたくなかったが、一句、一句、一音、一音までしっかり復唱されて、エルーは慌ててキリの言葉を遮った。
「ほんっと、シスターがこんなに淫乱でいいの?」
真っ赤な顔をして、肩で息をついているエルーを眺めながら、キリはニヤリと意地悪く笑った。
「いっ!…ら…ん…」
キリの台詞にまた叫びそうになるがなんとか堪え、キリを睨みつけた後、エルーはしかめっ面を作って、顔を逸らした。
「…誰のせいですか…」
頬を膨らましてぼそりと文句を呟く。
「ん〜……」
考えている声を漏らしながらキリはちらりとエルーを見やる。
「オレ…?」
そして、ひょっいと、エルーの顔を覗き込んだ。
突然のキリの顔のアップに、エルーの身体が跳ねる。
「だったら言わないでくださいよ…、変態っ…!」
ぐいっと顔を片手で押し返しながら言葉を突き付ける。
「変態ってヒドクない?」
「変態じゃないですか…」
「…まぁ、そうなんだけどね…」
「…!認めるんですか!?」
反らしていた顔を、返事に驚いて向けてくるエルーにキリは苦笑いを浮かべた。
(…自分で言ったくせに…。しかも、怒っていたこと忘れてるっぽいな、これ…)
しだいにおかしくなってきて、くすくすと笑いだす。
それにエルーは顔をしかめさせた。
「なに急に笑ってるんですか…変態…」
(あっ、思い出したみたい)
「うん…まぁ…」
(あんたが可愛いから……)
「…なんて言えないよな…」
「?なんですか?今なにか言いましたか?」
ぼそりと呟かれたキリの声は小さすぎてエルーの耳には届かず、僅かな音を拾ったエルーがキリに尋ねる。
「ん〜…エルーが淫乱だってこと、オレだけが知っていればいいかなって。」
考えるような素振りでこぼした後、キリは不意に腕を引いて、エルーを腕の中に閉じ込めた。
…まぁ、そんなこと…、オレ以外の奴にはさせないけどね……
そしてエルーの耳元で囁く。
エルーの顔が、ポンッと勢いよく赤くなった。
照れ隠しにキリの胸に顔を埋める。
キリが優しく抱きしめてきてくれて…その体温の心地よさにエルーが酔い始めた頃…。
「と、言うわけで…今晩いい?」
囁かれたキリの言葉に、エルーの瞳がパチリと見開かれる。
「何がと言うわけなんですか…!!」
ぐいっとキリの胸を押し、身体を離す。
「だめ?」
下からキリはエルーの顔を覗き込む。
「昨夜もしたじゃないですか!!」
「そうだけどね…で、いい?」
しつこく聞いてくるキリにエルーは小さくため息を零した。
「…だめって言ってもどうせするくせに……」
「まぁそうなんだけどさ…。一応確認ってやつ?一度でいいからエルーから了承を得てから行為に望んでみたいというか…」
「………」
得意げに微笑むキリに口を閉ざすエルー。
「で、やっぱり答えは…だめ?」
そんなエルーを再び引き寄せて、耳に囁きかける。
「…だめ……」
先ほどと同じ答えを口にするエルーに、今度はキリがため息を吐いた。
エルーの肩を掴んでいたキリの力が弱まった……時。
トン…と、エルーがキリの胸に抱きついてきた。
「えっ…?」
ぎゅぅっと、背中に回されるエルーの腕の感触に思わずキリは声を漏らす。
あまりの突然さに、キリの顔が赤くなっていく。
「…だめ、じゃないです…。抱いてくださぃ…」
「っつ!!」
「…こんな恥ずかしいこと…口にするの…キリさんの前だけですからね…。」
「…私だって…、キリさん以外の人になんて…触れさせたりしないです…キリさんだけにしか…許したりしませんから…」
そして僅かに聞こえてきたエルーの言葉に、キリは顔を片手で抑え込んだ。
「あ〜参りました。…マジで降参。」
「ふふ、何ですか、それ。」
頭上から降ってきたキリの声に、エルーはくすくすと笑みを零した。
自分の腕の中で笑っているエルーにキリは苦笑いを浮かべる。
「…エルーには敵いません。」
(先に惚れた弱みってやつ?)
ちょっと悔しくなって、エルーの背中に腕を回し、力強く胸に押しつけた。
エルーがぷっと声を漏らすが、キリは力を弱めず、そのままの体勢でエルーの耳に唇を寄せた。
「…とりあえず、今晩覚悟していろよ?」
そう耳に流し込めば、ほんのり朱に染まっていくエルーの耳。
軽く口づけて、さらに赤くなっていくのを眺めながら、キリは笑みを落とした。
少し意地悪い顔で見下ろしてくるキリの顔を見上げながらエルーは、どうしてこの人にいつも勝てないのだろう、なんて思っていた。
キリはキリで、自分の前でだけ淫らに咲いてくれるエルーにどんどん溺れていって……
もう離してやれそうにないな…なんてことを思っていたりした。
(いつか、キリさんに勝てる日が来るのかな…?
…勝てなくてもいいから…、ずっと、キリさんの傍に居たいな…なんて…。)
(我が儘な願い事・・・)
頭に浮かべた想いに恥ずかしくなって、エルーはキリの胸に顔を埋めた。
その時、エルーの手は…無意識にキリの服を強く握っていた。
…まるで離れたくない…と、言っているみたいに…。
一方キリは…、
(離してなんかやらないけどね…。
もうエルーはオレのもんだし、他の奴になんて絶対に触れさせないってーの。)
(ふわふわな水色の髪も…柔らかな肌も…甘い声も……すべて、全部全部、オレの…)
日に日に強くなる独占欲。
エルーに知られたら…エルーはオレを怖がったりするかな…?勝手に所有物扱いしないでください!…なんて怒るかな?
離れていかないように、エルーを強く抱きしめる。
強く、強く…エルーが逃げていったりしないように…。
腕の中に閉じ込める。
(( 早く…夜がくればいいのに…… ))
抱きしめあいながら、互いにそう思ったのは、心の中の秘め事。
End.
あとがき→