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□王様ハニー
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私には好きな人がいる。
江の島高校サッカー部「二列目の魔術師」といわれる彼、教室で隣の席の荒木竜一。
友達に言われて初めて見に行ったうちのサッカー部の試合はインターハイ地区予選の対葉蔭学院戦だった。
普段クラスでダラダラしている姿とは裏腹に、フィールドを駆け回り華麗にプレイする姿に胸の高鳴りを抑えられなかった。
サッカーなんて全然興味なかったのに。
試合が終わったとき友達に「え、友奈泣いてるー!大丈夫?」と言われて初めて自分が感動の涙を流していることに気が付いた。
でも、私が彼のことを好きだと気が付いたのはそれから暫く経ったある日のことだ。
試合を見てから、サッカー部に興味を持ち、たまに練習を見に行くことが習慣になっていた私は、その日もビーチサッカーをやっている彼らを浜の上から見学していた。
相変わらず楽しそうだなぁ、と微笑みながら見ていると、いつもいる彼が居ないことに気が付いた。
今日は休みなのだろうか、と考えながら飲み物を買いに自販機の方に歩いていると、浜辺に座っている荒木くんを見つけた。あれ?ただ休憩しているだけだったのかと思い、飲み物でも差し入れようかと近づいて行くと「やめとけよ、神坂」と呼び止められた。
『あ…マコくん』
「それ、荒木への差し入れだろ?今は、そっとしておいてやって欲しくてさ」
あいつ、多分今泣いてるからさ。と荒木くんの方を見て苦笑するマコくんにつられて荒木くんを見てみると、確かに肩が震えていることに気が付いた。
王様で、魔術師で、いつもかっこいいとこばっか試合で見せている彼なのに。自分のふがいなさが辛くて、負けたことが辛くて泣いてるなんて。
意外な一面を知った瞬間心がざわついた気がした。
もっと彼のことが知りたい。
もっと彼の力になりたい。
あの涙を拭ってあげたい。
色んな思いがぐるぐると頭を駆け巡って、最終的に行き着いた答えは、荒木くんの傍にいたいんだってこと。
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