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□ふわふわがいっぱい。
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春のぽかぽかした陽気の中、暖かな日差しが差し込む放課後の教室。
『マコー!ごめんね、委員会結構長引いちゃって・・・あれ?寝てるの?』
今日は珍しく部活がオフで、久しぶりに彼氏と制服デートな予定だったのに、こんな日に限って委員会の集まりが急遽決まり、委員長である私は必然的に出席しなければならなかった。
早く彼と一緒に居たい一心で必死で話し合いを終わらせてきたのに、ちょっとがっかりだ。
ぐっすりと寝ている彼の金髪をちょいちょいっと弄ぶ。
『マーコ。マコってば。起きないと私帰っちゃうよー?』
話しかけてみるも、全く起きる気配がない。まぁ、毎日あれだけハードな練習をこなしているんだから、疲れるのは当然だ。
『もう、しょうがないなぁ・・・』
起こすのを諦めて、彼の隣の席に腰掛ける。日差しが当たってきらきらしている彼の髪が凄く綺麗で、思わず微笑んだ。
『それにしても、ふわふわだなあ・・・』
髪を弄んでいた手を上に移動させ、彼の頭を暫く撫でていると、「ん・・・」と声が聞こえ、あわてて手を引っ込める。
「・・・友奈・・・?」
『マ、マコ、おはよう!よく寝てたねー』
「ん、おはよ・・・ってオイ!今何時だよ!!起こしてくれりゃー良かったのに・・・」
すでに5時を回っている時計をみてしょぼんとする彼。垂れた耳としっぽが見えるのは気のせいだろうか。
『ふふっ・・・もー、可愛いな』
「なっ・・・か、可愛いなんて言われても嬉しくねーよ!・・・大体、可愛い友奈に可愛いって言われるとか・・・」
不満げに口を尖らせながら何かブツブツ言っているみたいだけど、小声だから後半部分がよく聞こえなかった。
『えー?聞こえないよ、何?』
「ななな、なんでもねーよっ!・・・つーか早く行こうぜ?もう結構遅いし、行きたいとこに行けなくなっちまうぞ」
確か見たい映画あったんだろ?と携帯で調べ出す彼にぎゅっと抱き着いた。
「?!・・・なーんだよ、急に。今日は甘えたい気分なのか?」
一瞬驚くも、優しく笑って抱き締め返してくれる彼に擦り寄る。
『ん・・・最近忙しくてあんまり会えなかったから・・・』
「・・・ったく、んな可愛いこと言うなよな!ほら、行くぞ」
ゆっくり離れると、手を引かれて教室の出口に向かう。
「あ、そうだ」
『わ、っ』
急に振り返った彼に驚いて一歩後ずさると、ぐいっと腕を引かれ、
『んっ・・・?!』
二人きりの教室で重なった影は、すぐに離れていった。
「・・・おはようのキス、もーらいっ!」
耳まで真っ赤になって俯いてしまった私に、彼は悪戯っぽく笑いかける。
『も、もうっいきなり何すんのよ、マコってば!!』
「ハハッ、照れてやんの♪かわいーね、友奈ちゃん?」
『う、うるさいっ!ほらっ早く行こっ?』
「へいへーい」
自然と繋がる手に緩む口元を隠しながら、私達は昇降口に向かって歩き出した。
→あとがき