天地と2nd love
□淫乱人魚
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志波先輩が、またしてもおかしな事を考えついた。
先輩が突然、真面目な声で“今、会えないか?”なんて電話をしてくるから。
僕は何事だろうと、心配して走ってきたのに……
「何が人魚姫だよ!鯉のぼりの使い方、間違いすぎだからっ!」
この有り様だ。
夕暮れ時の浜辺に僕を呼び出した志波先輩は。
僕がその場所へ到着するなり、乱暴に襲いかかってきた。
理解できずに暴れてみたけど、志波先輩はいとも簡単に僕の衣服を剥ぎ取って、裸にして……
それから、無理やり鯉のぼりを履かせた。
そう。あの屋根より高くに掲げるはずの鯉のぼりを、ズボンというかスカートというか……
あんな感じに、僕に無理やり履かせてきたんだ。
そして、唖然としたままの僕の体を防波堤に座らせて、こう言う。
「天地……おまえはオレの人魚だ」
最初、何を言ってるんだろうと思った。
すると志波先輩はポカンとしたままの僕に、更にこう続けて聞かせた。
「オレは高校時代、人魚姫の伝説なんて信じていなかった……けど今は信じてる。天地。オレはこの浜辺で見つけたんだ……オレの……オレだけの人魚を……!!」
正直……言葉の意味を理解していくのと同時に、僕はイラッとした。
べつに人魚姫の伝説は、アレはアレで構わないんだけど。
そういうことじゃなくてっ…!!
「何だよそれ!……突然の電話に何かと思って来てみれば、力ずくでこんなカッコにさせてさ!これで“なんちゃって人魚姫です!海辺で遊んでるよ!きゃはっ!”みたいのが先輩は見たかったワケ!?たったそれだけ!?バッカじゃないの!?こんなの無理にやらせるようなことじゃないじゃん!!」
「いや……」
どこか自信ありげな笑みを浮かべて、志波先輩はどこに隠していたのか怪しげな紙袋を持ち出した。
そしてそれを、僕の目の前にちらつかせる。
「……何?それ」
「オレが本当にやりたいのは、ここからだぞ。天地」
「え…?」
先輩は、その紙袋からビデオカメラを取り出した。
「え!?ちょっ…」
どうやら、持参していたらしい。
そして先輩は、清々しさすら感じさせる笑顔で堂々と言い切った。
「天地。今日は人魚姿のおまえを、存分に撮影させてほしい」
「いっ、やだっ!!」
僕は慌てて断ったけど、志波先輩は拒絶の言葉なんて聞こえていないかのように、うっとりと息をついている。
「たまらねぇよな……こんな人魚姫が実在すれば、オレは自宅にでっかい水槽を用意して連日連夜、鑑賞し続ける」
「先輩!僕が嫌だって言ったの聞こえた!?……っていうかもう寒いから、洋服返して!!」
「ん?……寒いんなら、オレがあっためてやるぞ。何だ。おまえ誘ってるのか…?」
「えっ!?」
「そうか誘ってるんだな!?誘ってるんだろ!?ハァハァ…」
「ち、違うよ!洋服返してって言ったの、聞こえなかったの!?」
「………」
志波先輩は怒っている僕の顔をじっと見つめて……
ちょっと考えてから、言った。