天地と2nd love
□June bride(前)
1ページ/13ページ
とあるサプライズをもくろんで、オレの部屋に天地を呼んだのに。
その天地と……ずいぶん長いこと、オレは言い争っている気がする。
「……天地」
「イヤだ」
「そんなに頑なに拒否しなくてもいいだろ」
「イヤだ」
「いや……そう言わずに。……エロカワしょうたん。今日もかわい……」
「絶対にイヤだ」
「…………」
(……参った。)
せっかく用意した婚約届けに、天地が名前を書いてくれない。
「ハァ……」
予定としては、こんなはずじゃなかった。
予定としては……
『結婚しよう!小悪魔しょうたん!!』
『うん!もちろんオッケー!!』
『そうか、よかった…!そうと決まれば、この婚約届けに名前を書いてくれ!ちなみにオレの分はもう全部書いてある!!』
『準備バッチリだね、先輩!えらいえらい!よーし、名前書きおわったよ!ね、先輩!さっそく役場に届けにいこっ!!』
『いや……ちょっと待ってくれ……!!』
『ん?どうしたの?』
『コレ……ペアリングだ…!!』
『えっ、本当に…?』
『ああ……しかも普通のペアリングじゃないぞ…!コレは、ペアコックリングだ……!!』
『さすが先輩!浮気対策はバッチリだね!うん、すっごくいい!気に入っちゃった!!』
『天地…』
『志波先輩…』
ここで情熱的なキス。そして……
『なぁ、しょうたん……おまえを嫁に貰う前に、言っておきたいことがある』
『なぁに?何でも言って?僕の志波先輩』
『いや……せっかくだから、歌にしてきたんだ』
『えっ?』
『伴奏を頼んである。針谷……出てきていいぞ』
『天地!オッス!』
『針谷先輩!志波先輩の部屋のベッドの下に隠れてたんですか?せっかくのヘアスタイルが台無しですけど、僕たちのために……ありがとうございます!』
『おぅ!このハリー様にここまでさせたんだ!ありがたく聴けよ!!』
『はい!ありがとうございます!』
『じゃあ、聴いてくれ……志波勝己で、関白宣言』
……と、とんとん拍子に進むはずだったのに。
(ハァ……)
「なぁ、天地…」
「ダーメ!何度頼んだって、ダメなものはダメ!」
「………」
(あぁ、参った……)
このまま天地が、うんと言わなかった場合。
ペアコックリングを用意して、関白宣言を覚えてきたオレの立場は……
いや、むしろ……
脅迫に近い形で無理やり関白宣言を弾けるようにさせて、しかも朝からベッドの下に押し込んである針谷の立場は……
(どうなるんだ…?)
.