NightMare
□水面下〜天地編〜
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志波先輩と会った、帰り道だった。
先輩は今日もいつもと変わらず、ちょっとしたことで突然欲情し、路上でいきなり僕の洋服をまさぐってはキスを迫ってきた。
そのくらい、もう驚かない。
別に人目を気にして騒いだりするのも、もう僕は諦めてる。
こんなこと、よくあることではあった。
でも今日は、いつもと違っていた。
先輩の後ろ髪から、微かに知らない香水が香ってきた。
きっかけはそれだった。
愛してる、ずっとおまえだけだ、と歯の浮くようなセリフを繰り返す先輩の首筋から。
時々、知らない香水がふわっと鼻腔をくすぐる。
前から気になってた。
志波先輩がどこかで適当に男を抱いてきてることは、本当はもう、ずっと前から知ってた。
浮気してる?って聞くと、先輩はいつもしてないって答える。
志波先輩はまるで、別の誰かと肉体関係を持つこと自体は浮気に入らないと思っているようだった。
“愛してるのはおまえだけだ。”
志波先輩は言う。
“でも抱いたんでしょ?”
僕は突っかかる。
“体だけだ。”
先輩は悪びれない。
“もう、いい。先輩なんか知らない。”
虚しくなって、僕はいつだって途中で口論を放棄してきた。