NightMare

□水面下〜志波編〜
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愛しの小悪魔しょうたんに、また怒られてしまった。

“志波先輩は、香水なんて使う人じゃないじゃん!”

今日、天地に会った。
ずいぶん前から、会う約束をしていた。

最初上機嫌でいた天地は、あるときいきなりオレから甘い匂いがしたと怒り出し、もうすっかり見慣れてしまった例のぷりぷりフェイスで騒いだ。

“今度はどこの誰を抱いてきたんだよ!もう、最悪!僕がイヤだって言ってるの、どうしてわかんないの!?信じらんない!知らない人を抱いてきた腕で、僕に触らないで!”

小型犬のように甲高くわめき散らす天地を、どう宥めるべきかとオレは考えていた。

心当たりがないわけじゃなかった。

天地に会う前に、ちょっとすれ違った男がこの間、ハッテン場で会った男だったから奇遇だなということになって一発やってきた。

でも、別に、それだけだ。

どこの誰を抱いてきたんだと天地に責められて気付いたけど、オレはその香水をつけていた男の身元はおろか、名前さえも聞いていなかった。

答えられずにいるオレに、ついさっきまで散々怒っていたはずの天地は、いきなり泣き出した。

“……もう、こんなのヤダ。こんなことばっかり、本当は考えたくないのに。”

(……ハァ。)

女みたいだな、とそのときオレは泣き出した天地の頭を撫でながら思った。

年下だからな、とうっかり口にしただけで怒り出すアイツには死んでも言えないけど。
アイツはどうも女々しいときがある。

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