NightMare
□囚人〜クリス編〜
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ショータクンを拉致してきた翌日の深夜。
氷上クンがボクのマンションに訪れ、話を聞いて帰っていった数時間後のコト。
――ガタンッ!
ショータクンのお部屋から、大きな音がした。
その時のボクは、お仕事用のパソコンでメールをチェックしていたところやったんやけど……
「ショータクン?」
まぁ、緊急のメールなんて一件も入ってへんかったし。
もちろん、ショータクンのおめざめのほうがボクには大事やし……
「いま行ってあげるから、暴れんで待っててな」
鼻唄交じりに、ボクは壁掛けのキーカウンターから例の部屋の鍵を持ち出した。
「ショータクン?」
鍵を開け、扉を開けて、ボクは室内に電気を付けた。
「オハヨウ。いつ起きたん?」
「………」
ショータクンは意識を戻していた。
怪訝に眉を寄せながら、ボクの顔を見上げる。その瞳が困惑しているのがスゴクおかしくて、ボクは笑いが込み上げてきた。
「ふふっ…。キミは元気いっぱいやなぁ」
椅子に拘束され、暗い室内に閉じ込められている自分の状況を、ショータクンはどんなふうに捕らえたんやろーか。
脱出を試み、一応暴れてみたんやろか。
さっきの大きな音。
キミが椅子ごと床に倒れた音やったんやなぁ。
「そんなコトして痛かったんとちゃう?ムリしたらあかんよ?」
歩み寄り、ボクは倒れたままのショータクンのお顔を覗き込んだ。
(……そーやった。そーいえばこのコ、昔から学校中で“カワイイカワイイ”騒がれとったんや。)
想像よりも、ずっと小さな顔立ちに、一瞬驚いた。
白い首筋は、ちょっと絞めれば息絶えてしまいそうなほどに細かった。
ボクがこの日のために選んできた深紅の麻縄。それがショータクンの薄い胸板を締め上げている光景は、犯罪チックでさえある。
(このコをこんなに間近で見たんは、よくよく思えば初めてやんなぁ。)
志波クンの恋人やっていうだけで、ボクはほとんど関わったコトのないショータクンをムリヤリ捕まえた。
更にこうして、自分のマンションに監禁。復讐のために利用しようとしている。
ここへきて初めて、ボクはその事実に対しての現実感が沸いてきた。
(……うわ、どないしよ。)
めっちゃワクワクしてきた。
「……あの、クリス先輩」
「ん?なあに?」
眉間を寄せたまま、ショータクンはクスクス笑うボクを見上げている。
ショータクンのおめざめの第一声。それは“何でこんなことをするんだ”とか“今すぐ離せ”とか……
そういう類のものとは違っていた。
「僕、クリス先輩を怒らせるようなこと、しましたか…?」
「………」