NightMare

□囚人〜針谷編〜
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“カワイコちゃんを連れてくる。”
そう言ったクリスが部屋を出ていくと、最初からずっと計画に反対し続けていた佐伯が、改めて同意を求めてきた。

「……なぁ、どうなんだよ?クリスはあんなこと言ってたけどさ、やっぱりまずいだろ。道徳的にどうなんだよ。“復讐”って」

「道徳的にどうって言う前に、オマエのそのグズついた考え方の方がどうなんだよ」

何となくムカついてきて、オレは佐伯を睨みつける。
なんでココまできてやめようなんて言い出すのか、ちっともわかんねぇ。

志波に何されたか、忘れたわけじゃねぇだろうな?

やられたらやり返すのって、そもそも間違ってないと思う。
やり方の善悪なんてのは今更どうだっていいし、今回は状況が状況だ。
その行為がどんなモノであれ、復讐になればそれでいいんじゃねぇの?

「佐伯が一人で何て言ってようと、オレはクリスに賛成」

「いや、針谷はもうちょっとよく考えろよ!安易に考えすぎだろ!」

「オマエがウダウダしすぎなんじゃねぇの?佐伯って、案外女々しーのな」

「なんでだよ!」

面倒臭くなってきてオレが佐伯から目を背けたとき。長らく俯いたまま一言も口を聞かなかった氷上が、しっかりした口調で言葉を挟んできた。

「……喧嘩はやめたまえ。佐伯君」

「な、なんだよ…」

「戸惑う気持ちはよく分かる。僕も最初は賛成しかねると思った」

「……!だよな!?やっぱ、よくないんだよ!だから、今すぐこんなことやめっ……」

「いや。しかし、志波君をあのまま放置して終わらせるのは良くないのも事実だ。やられたことを思えばフェアでない」

「そりゃ、そうだけど……」

「今まで志波君は、暴虐な行いを幾度も繰り返してきた。反省の色は全く見えていない。そんな彼に、今までの事の重大性を理解し、心を入れ替えてもらおうとするのなら……今回の計画は実行せざるを得ない」

「何もっともらしく言ってるんだよ!志波に論点置きすぎだろ!天地はどうなるんだよ!そもそも無関係だろ!」

「……ハァ?」

オレは呆れ返った。

「天地は志波のカレシなんだろ?それだけで十分関係者だっつーの」

「いや、ちょっと付き合ってただけだろ!こんなことに巻き込んだら可哀相だって思わないのかよ!?」

「可哀相〜?んなコト言ってる場合かよ。オレらは被害者なんだから怒ってもいいの。バッカじゃねぇの?」

「なんだよ、それ!怒ってたら何してもいいのかよ!?」

佐伯が声を荒げかけたところで、ガチャッと奥のドアが開いた。

クリスだ。

一同が息を飲んで振り返る。

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