NightMare
□天使のいない週末〜志波編〜
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小鳥のさえずりで目を覚ました、日曜日の朝だ。
夢うつつのまま、オレは手を伸ばした。
同じベッドで眠る恋人の、柔らかな髪に触れたくて。
しなやかな肩を、自分の胸に閉じ込めてしまいたくて。
「………?」
手を伸ばしてもそれらが見つからないことに気づき、オレはようやく現実に帰る。
(……ああ。そうだった。)
「ハァ……」
今日は天地がいなくなってから迎えた、三度目の日曜日だ。
最初は信じられなかった。
あんなにいつも近くにいた天地が、急に行方不明だなんて。
だけど……
連絡のつかないケータイや、声を聞いてない期間の長さ。
寒空の下を歩いているのに、アイツの凍えた手を暖めてやれない違和感。
せっかく駅前のケーキ屋が新作を出したのに、アイツのサディスティックな批評を耳にできない寂しさ。
まだ眠っているアイツの頬に、キスができない週末の朝……
そんなものが積み重なっていき、オレはようやく天地がいなくなった現実を理解した。
商店街の本屋とケーキ屋に始まり、はばたき城や温水プール。あげくの果てには海辺の灯台……
アイツの行きそうな場所はすべて捜して回った。
結局。天地を見つけ出せないまま、日数ばかりが過ぎてしまったけど……
(今日こそは……)
今日こそは、ケロッとした顔で“あっ、ゴメーン。心配しちゃった?”なんて笑うアイツを、見つけられたらいい。
ベッドから抜け出すと、適当に着替え、オレは家を出た。