まずいよ!勝己さん!!

□珊瑚礁で(1)〜佐伯編〜
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じいさんは、勝手だ。
俺には何も知らせないで、珊瑚礁のアルバイトに、はね学のやつを雇ってしまった。

そいつは、志波勝己っていう俺と同学年の背の高い男なんだけど……

「佐伯」

「……何?」

「オレとおまえ。いま二人きりだな……ハァハァ…」

「………」


俺はこいつが、ものすごく苦手なんだ。


「……黙って仕事してろ」

ちょくちょく、俺のこと見ながらハァハァしてるし……

女性客には態度悪いくせに、男性客にお釣り渡すときとか無駄に手を握ったりして……

なんかわかんないけど、不気味なやつなんだよ。すごく。


とりあえず志波と目を合わせないようにして、俺は食器を磨いていたんだけど……

志波はそんな俺の背後に忍び寄って、

「……おまえ、はね学プリンスなんだってな?」

濡れた吐息が耳元にかかるくらい近くでそう囁き、じっとりとした手つきで俺の肩を撫でた。

「……やめろ!」

「何だ、そのウブな反応。……まさか、おまえチェリ…!いや……ハァ…ハァ……そ、想像しただけでどうにかなりそうだ…」

志波は何を想像したのか急に息を荒げ始めて、興奮気味に背後から俺を抱きしめると、髪の匂いを嗅ぎだした。

「わっ!何なんだよ…!?」


じゃれてるのか何なのか知らないけど、マジで勘弁……


志波の腕を振り払って、俺はこの日初めて志波を正面から見上げたんだけど……

「……!」

瞬間。自分の目を疑った。

「……お前!…それ…」

「何だ?」

何だ、じゃない!

お前は何でウエイトレスの制服を着てるんだよ!?
それって女物だろ!?
こいつがボーイの方より、ウエイトレスの方を着たがったのか!?
それともじいさんが間違ってコイツにコレを渡したのか!?

どっちにしろ、ありえないだろ!!


志波は当たり前のような顔で女性用のスカートから、筋肉質な脚をさらしている。
ちゃっかりストッキングまで履いているところが、なんか、すごくムカつく。

俺は信じられない気持ちで志波を睨みつけながら、ため息をついた。

「……言いたいこと山ほどあるんだけどさ。とりあえず……お前、その服、脱げよ」

イライラしながら言った俺の一言に、志波は目を見開いて驚いた。

「……!おまえ……いいのか……!?」

そいつは、ゴクリと唾を飲んで俺に聞いてくる。

いいように受け取るぞ。
おまえから誘ってくるなんてな。

とか、聞こえたような気もしたけど……気のせい、だよな?

「……いいからさっさと脱げよ。そんな格好で、珊瑚礁の店員ですって顔されたくないよ」

「本当に……いいんだな?」

「ああ。早くしろ」

「ハァハァ……そんなに急かされると、期待しちまうぞ……」

「は?」

……何なんだよ、こいつ!
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