名作パロ
□勃ってごらん
2ページ/9ページ
氷上先輩はずっと泣いていて、しばらく何も話さなかった。
僕はというと、時間を気にしてちょっと苛々していた。
わざと悲しそうな表情を浮かべて、氷上先輩に目配せしてみる。
「少しは落ち着きましたか?先輩は、自分の中に溜め込んじゃうタイプだから……僕、心配だなぁ。ねぇ、氷上先輩。僕でよかったら、何でも話してくださいね」
志波先輩から散々“おまえ、本当に卑怯だよな…”と言われ続けた笑顔で、僕は微笑んだ。
早く帰ってもらいたい気持ちも手伝って、氷上先輩の手とか握ってみる。
「ね、先輩…?」
(時間もないし、話すなら早くしてほしい。そんな風にめそめそされても、何があったのか全然わかんないんし…)
「僕、秘密はちゃんと守りますから…」
(っていうか、志波先輩が来る前にシャワー浴びたいし、制服着替えたいし…)
「氷上先輩のことが、とても心配なんです…。お話してください」
(話をする気がないんなら、早く帰ってくれないかな。)
「僕じゃ、先輩の力になれませんか…?」
(あー、もうムリ。これで相手が折れなかったら、もう理由つけて帰ってもらおう。)
「あぁ……やっぱり僕じゃあダメなんですね…。氷上先輩のお役に立てなくて、すごく悔しいです……」
“残念だけど、相談相手が僕では不足のようなので、他に相談しやすい方を探してください。”
続けてそう言ってやろうと企みながら、僕が落ち込んだ表情を作ったときだった。
氷上先輩がぷるぷる奮えながら、顔をあげて言った。
「ほっ……本当に、君は何でも聞いてくれるんだろうか!?」
「え…?ええ…、もちろんですよ。お約束します」
「ならば僕は話そう…!君は話を聞いた後、絶対に断らないと、今この場で誓ってくれないか!?」
「えっ……えーっと…。そうですね……」
ちょっと考えたけど、大した内容ではないだろうと予測した僕は、微笑んで受けた。
「……もちろん誓います。男に二言はありません」
.