死帳

□鐘の音。
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『―――竜崎!!!』








あの時、僕は。












あの時。
お前が椅子から落ちたとき、
肩を抱いたのは、人間の本能。

決して
その細い体が折れてしまわない様にではない。


あの時。
お前の名前を叫んだのは、
只の演技。

決して
生きてほしかったからではない。




そう。
思いたかった。










お前が灰になる前に。
一人でお前のいる部屋に入って。


まるで眠っている様なお前の唇に、キスを落とした。

でも。
あまりにも冷たくて。
死の味がした。


僕はまだ信じられなくて。
お前の名前を呼んだけど。

返ってくるのは、狭い部屋に反響した自分の声。



その場で、泣き崩れた。



お前の居ない世界なんて。
生きる意味が無い。



だから僕は、捜査本部の屋上に上がって。

雨の降る、空に飛び込んだ。









鐘の音が 聞こえた気がした





【END】



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