短編集2

□僕の愛する数式
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世界でただ君だけでよかった。



君が居てくれたなら僕はそれだけで幸せだったんだ。






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   僕の愛する数式
         ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄




『いつも数式ばっかり眺めて、何が楽しいの?』



馬鹿にされたり、不思議そうに見られたりした。


そんなの慣れっ子だったから、気に留める事もなかった。




なのにそれを「綺麗」だと君は言った。



「数式眺めてる時の君は、最高に綺麗だよ」




そう云って揺れる君の瞳の方が綺麗だったのを今でもよく覚えているよ。



長い夜を一緒に過ごした。


僕はただ数式を見つめているだけだったけど。


君はただそれを見つめているだけだったけど。




そこには確かに二人だけに成り立つ数式が流れていた気がするんだ。











何の前触れもなくぽっかり空いてしまった空間は、僕を躊躇わせた。



今まで分からない数式なんてなかったのに、僕には到底わかりそうもないそれが、突然僕の前に現れた。






解き明かそうとしたって無理だ。







誰にも解ける筈がない。


君を解き明かそうとしたって無理な様に。



君が居ないという数式は もう変わらなくて



君を取り戻す数式は 一生わからない。




君はいつの間にか、僕の数式になっていた。










世界でただ君だけでよかった。



君が居てくれたなら僕はそれだけで幸せだったんだ。

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