09/02の日記

19:06
WTトリップ
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唐突に始まるミデンじゃない日本からトリップした子の話。
デフォルト名?知らない子ですね


瓦礫の山と焼け跡にまみれた平原。
煤があたりに舞っていて、すぐにでも歩みを止めて、踵を返してしまいたくなる。
足が痛い。
骨や肉が軋んでいる。
ぜえぜえと肺が、どくどくと心臓がうるさい。
ときたま咽喉の奥がかゆみだし、せき込む。
滲む視界を振り払う。
それでも足を止められない。
怒号/叫び声が迫っている。
化け物の足音も、破壊音も、何も消えはしない。
早く早く早く。

ぜんぶ
 きえて


「そうだ、遊真お前、誰かと住んでるよな」
迅さんが唐突にそう言った。
鬼怒田さんと根付さん、忍田本部長が顔色を変える。
平然としているのは当人である空閑と林藤支部長、城戸司令くらいのものだった。
「ああ、うん、いるよ。同居人。なんで?」
空閑の声は軽く、本当になぜ話題に出されたかすらわかっていないようだった。
「その同居人もネイバーだろ?さすがになにもなしってわけにもいかない」
「ふむ。まあたしかにそうだろうな。ここに呼べばいいの?」
迅さんと空閑だけで会話が進む。理解が追い付かない。
「ま、待ってくれ、空閑君!」
一番に我に返った忍田本部長が口をはさんだ。
「同居人というのは、君の兄弟か?」
「いや、ちが…あー、うーんと…」
空閑は珍しく言葉に詰まった。どう言っていいのか悩んでいるようだ。
『わたしから説明しよう』
空閑の服からレプリカが出てきた。少しほっとしたように空閑は口を閉ざした。
『同居人の名前はナマエ・ミョウジ、名前の通り、ユーマの兄弟でもユーゴの子でもない。ココでは一応、空閑なまえという名前で、ユーマの姉ということにしている』
「ただのネイバーということか…!?」
鬼怒田さんがレプリカに怒鳴るように問いかけた。その言葉に三輪先輩、根付さん、城戸司令も眉をひそめる。
『ユーゴはナマエはネイバーにさらわれた子供であるという結論を出した。わたしたちもそれを信じている』
『ナマエは6年前、我々の協力していた国の敵国の兵に追われていたところをユーマが助けた子供だ。トリガーはおろか、トリオンの存在すら知らなかった。また所持品などからニホンにいた子供だろう、とユーゴは結論付けた』
ここで、ずっと黙っていた唐沢さんが口を開いた。
「日本の子なら、身柄を預けてもらえれば家族とか調べてあげられるよ」
探してあげたほうがいいんじゃないか?と唐沢さんが何でもないように続ける。レプリカが揺れる。
空閑はピクリとも顔を動かさなかった。
『それには及ばない。ナマエは学生証なる身分証明書を有していた。こちらに来たその日のうちに、そういった情報については調べていた』
「…? それなら、なんでまだ空閑君と暮らしているんだい?」

『家の住所も所属していた団体、学校も存在していなかったためだ』

一瞬、なにを言っているのかわからなかった。唐沢さんや根付さんは口を薄く開けた状態で固まり、城戸司令ですら目を見開いていた。
『学生証に記載されていた学校の名、住所。ナマエの家の住所。それらは全てこのニホンに存在した記録すらない名前、地名だった。ナマエはここは自分の故郷ではないと結論付けている』

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