05/21の日記

23:00
wt夢(ネタにのってる設定のやつ)
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WT夢

ネタに設定乗せてた遊真の義姉(現代日本からのトリップ)主
玉狛に入ってすぐの話


目が覚める。
きれいな天井だ。
煤や蜘蛛の巣など一つも見当たらない、清潔な部屋。
身を起こすと、やわらかいマットレスに腕が少しだけ沈み、滑らかな布地が肌をやさしくなでながら落ちた。

「……ああ、日本に来たんだっけ」

一瞬、帰ってきたのかと思い、今までのすべてが夢であったという錯覚が頭をよぎった。
しかしその錯覚は、目に入る私物などない殺風景な部屋を見渡すことで霧のように消える。

玄界の日本。

私は私の日本と区別をつけるために、そう呼称している。……心の中で。
きっと、これをここの人に言ったら妙な顔をされるし、理由を知ったら顔を赤く染めて怒られそうだ。
あの、三輪といったか、怖い人ならなおさら。近界を嫌悪しているらしいので。でもそれは私も同じなんですけどね。

気分をあげて落とされたので、眠気もどこかに行ってしまった。
幾年ぶりの暖かい布団が名残惜しい気はするが、ちらと目に入った時計がすでに7時を回っていたのでさすがに起きることにする。

中学高校に通える歳ではなくなってしまったために、通学のため早起きする必要はないのだが、ユウマはそうはいかないのだ。
弟が早起きするのに働いてない姉が惰眠をむさぼるのはよくない。世間体的にも、家主の心象的にも。

「お、ちゃんと起きてきたな」

「おはようございます」

「オハヨ、なまえ」

エプロン姿の林藤さんと制服姿のユウマに挨拶。ユウマはすでに朝ごはんを食べていた。

お味噌汁、ごはん、納豆、卵焼きに焼き魚。サラダが入っている皿の横、小鉢にネギまでもってある。
なんということだ、記憶の彼方にある日本でも、こんな豪勢な和食を朝ごはんで食べたことない。旅館か? 朝はトーストにウインナー焼いてあったらもうよくない?

「顔は洗ってきたか?」

「あ、はい。 2階のトイレの洗面所、使ってよかったんですよね」

「そりゃもちろん。でも洗顔料あったか?」

「あ、いや、きれいな水で洗えたらもう十分なんで……」

「洗顔料はちゃんとあるから、もってっときなさいね……」

「えっと、……はい」

ちょっと涙ぐんでる林藤さんに焦りつつも席に着く。
箸とフォークとスプーンと先割れスプーンがおいてある。 ……多くないかな?

「おっと、なまえは箸が使えるか」

「あ、はい。日本に居たんで」

まじまじと食器を見つめてしまったせいで、林藤さんに気を使わせてしまった。
箸以外の食器を片付けてくれた林藤さんが、頭をかいて謝罪する。
いやいやいや、そんな、なんてこっちも焦りつつなんとかおさめて朝食を摂り始める。
おいしい。 ……すごく、おいしい。

郷愁の念というのだろうか。ああ、この味。懐かしい。こんなのを、ずっと食べてたんだ。食べれていたんだ。

「お、おい、なまえ……」

「……」

気づいたら涙があふれていた。視界がゆがんでたの、涙だったんだ。湯気かと思ってた。アツアツのごはんだったし。

焦るユウマも、何も言わずにこちらを見つめる林藤さんも無視してひたすら朝ごはんを口に運ぶ。
行儀悪く鼻をすすり、口に入っているご飯と焼き魚を咀嚼する。飲み込んで、口に残ったお米を味噌汁で洗い流す。

「ごちそうさまでした。すごくおいしかったです」

「おそまつさん。口に合ってよかった」

林藤さんの目が、眼鏡の奥で細まる。お父さんって、こんな感じだっけ。ユウゴさんとはまたちょっと違う感じ。
私のお父さんとは、どこか違ってるかな。もうおぼえてない。

頬の途中で乾いた涙がヒリヒリする。食べ終えた食器を流しで水につけて、ついでに頬にも水をつける。
袖で拭って、明日にはなんとなく感じていたモヤモヤもとれてればいいなと思った。

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