シリーズもの

□強気なあの子と
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「ちょっとそこのあなた」

あー、なんだか疲れたなあ……。
しっかしハヤトさん年上だけどかわいすぎるよ。なんであんなにかわいいのかなあ。

「ちょっと!」

年上の、成人済みの男の人の形容詞じゃないってのはわかってるけどさ……あの笑顔は反則だよ。
ちなみに審判さんによるとハヤトさんに彼女はいないらしい。
あんなにかわいいのに、と思ったが、まあなんというか、ファザコンが過ぎるので内面をちょっとでも知った人は離れていくんだそうだ。
HGSSでのあの口げんかを見ている私としては、ああなるほどで済むのだが、やっぱり普通の人はひくよね。
マザコンでもちょっとアレなのにファザコンだもんね。

「聞いてるの?」

「え?」

「……聞いてなかったのね。いい度胸だわ」

「いや、あなた誰ですか」

いきなり肩をつかまれていい度胸だわって……あんたがいい度胸だな。
初対面にそういうことするか、普通。

「私はユキ。 あなた、いまキキョウジムから出てきたわよね」

「はあ……それがどうかしましたか」

「……名乗られたら名乗り返すのが礼儀よ」

「あなたが礼儀を語るってことは、いきなり肩をつかんだ挙句にいい度胸だわ、なんて言うのは礼儀にかなっていることなんですね。初めて知りました」

(私好みの)きれいな女の子だったが、それなりに強い力でいきなりつかまれたら機嫌だって悪くもなる。
ハヤトさんの笑顔思い浮かべてたのに吹っ飛んだじゃないか。

「……本当、いい度胸」

「はあ、どうも」

不快そうに眉を顰められても、こっちがそうしたいんですけどねえ……。
この子……ユキさんだっけ、気が強そうだから言わないけど。

「……まあいいわ。ジム戦、勝ったの?」

「教える必要ってありますか?」

「別に必要も義務もないわ。けど教えてくれない?」

字面だけ見れば、少ししおらしい感じの聞き方だが、実際にユキさんは尊大な感じで仁王立ちしている。
それが人にものを頼む態度かよ、と思うものの、まあ女の子だしなあと少し考える。
男だったら会話ぶった切ってすたこら逃げているところだ。

「……勝ちましたけど、あなたにそれが関係あります?初対面ですよね?」

「そう、勝ったの……」

後半部分総無視で考え込んだユキさん。
なんというマイペース。
人の話聞かねえタイプだな……進行形で聞いてないし。

「ねえ、私と勝負してくれない?」

「え、嫌です」

「…………」

「…………」

にやりと目を三日月型にしたユキさんの提案を即答で断ると、ユキさんは珍獣を見るような目でこちらを見てきた。
いやん、そんな風に見つめられると照れる☆かっこぼうよみかっことじ

「……普通、こういうのって受けない?」

「普通、今さっきジム戦してきた人に勝負しかけないと思いません?」

憮然とした表情で黙られてしまった。
おお、口がへの字になってる。

「……別に今すぐにバトルしろってんじゃないわ。キキョウを出る前に勝負してくれない?」

「はあ……それなら、まあ」

「いいのね? あなたいつまでここにいるの?」

「今日は少なくともここに泊まる予定です」

「そう、じゃあ明日勝負してくれない?」

「……まあ、いいですけど……」

「決まりっ!場所はポケモンセンターの中庭ね! そういえば、あなたの名前は?あなたって呼びづらいわ」

きらっと瞳を輝かせ、ユキさんは私の手を握ってきた。
あ、やばいかわいい。
くっ、メロメロをつかってくるなんて……同性には効かないんじゃなかったか?

「ナナコです」

「ナナコね! じゃ、明日はいいバトルしましょう!」

それだけ言うと、ユキさんは私に向かって手を振りながら、キキョウシティを出てしまった。
……おいおい、もしかしてあの子、野宿してんの……?

「……嵐のような人って、ああいう子のことを言うんだろうなあ」

まさに台風一過。
今まであったあわただしさは嘘のように消え、キキョウシティ本来ののんびりとした空気が私を包んでいた。
……うん、バトルするときはあの子のこと、おユキちゃんて呼ぼう。
なんとなく反応が楽しみだ。
きっとあの子は私の予想の斜め上の反応をするんだろうな。
うーん、なんかあの子、長い付き合いになりそう……。
あれか、あの子はライバルポジションか。別に私主人公でも何でもないけど。










(11/07/23)

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