シリーズもの

□強気なあの子と、その2
1ページ/1ページ




「……起きた、起きたよアッシュ。起きたから、お願いだからどいてください……」

なにやら息苦しい感じで目覚めた今日この日。
そう、かの台風少女、おユキちゃんとのバトルの日である。
……精神的にも身体的にも疲れたから帰るなりバタンキューして、時間たった感じしないけどね!
疲れて早めに寝ると寝過ぎて頭痛くなる。私だけかなあ。

「そろそろマジでガチできつい……っ負けるな私の腹筋……」

いまだにどく気配のないアッシュ。
こいつ、私の無防備な腹にのしかかり攻撃を仕掛けてきやがったのである。
うおおおおお、50キロは重いって……!!

「……おはようございます、アッシュ君。私、モーニングプレスを君に頼んだ覚えはないんだけどなあ」

きっちり5時に起こしやがって。
なんて健康的だよ馬鹿野郎。
朝のランニングでも行けってか。行かないからね。
ベッドの上で正座して、エアームドとにらみ合う私はさぞや滑稽な図だと自分でも思う。
しかし生きとし生けるものには譲れぬ戦いというものがあってだな……!

「ぴかーぁ」

「おっはようミモザ!ご飯にする?歯磨きする?それともお・風・呂?」

私的にお勧めはお風呂かな!昨日疲れすぎていて入れなかったから!!
……ん?譲れぬ戦い?ミモザよりも大切な戦いなんてあるのかな?
爆発的にかわいいミモザの目覚めについで、ミントも眠そうにソファからふよふよと降りてくる。
別にミントとネルの嫌がったわけじゃないからね、嫌がられたわけでもないからね。
ただミントがソファにおいてある、ふっかふかのクッションを気に入っちゃっただけなんだからね……っ。

「ミントもおーはようっ」

とろけるような笑顔(自称)で挨拶をすると、まだ眠そうな感じで私にすり寄ってくるミント。
あぁんこの魔性のぷにぷに……!

「痛い!」

またしてもアッシュのつつく攻撃である。
体感威力的にはつのドリルって感じだ。いちげき ひっさつ !▽
それにしても、アッシュはミントが絡むと途端に怖くなる。
……男の子同士に偏見はないけど、えええ……グループ違うじゃん……?
同意がなかったらお母さん認めませんからね。

「だから痛いって!!」

くっ、テレパシー……だと……!?
お母さん、アッシュをエスパータイプに育てた覚えはありませんよ!
……どうやら本格的に心を読まれているようである。
変なことを考えれば考えるほど、アッシュの目つきは鋭くなり、挙句の果てには進行形であくのはどうを作り始めている。

「待った。ストップ。私が悪かったからそれだけはやめて?ジョーイさんに怒られる」

ブラックリストに載せられて野宿、なんて御免だ。前科一犯にもなりたくない。
私なりに必死で訴えかけると、睨んでくるのはやめないものの、なんとかあくのはどうを収めてくれた。
あぶねえ……。





「ご馳走様でした、と……」

だれが作ったのかは知らないけど、いつもどこでもおいしいポケモンセンターのご飯を食べ終わり、お皿を片付けてから腹ごなしにと中庭へ向かう。
そこには、おユキちゃんがいた。

「…………」

木漏れ日の中、木に寄り掛かった彼女は安らかに眠っている。
彼女のボールの中には、こちらを見てあわてているウィンディの姿。
見なかったことにしますか?
はい いいえ▼

「……………」

見なかったことにしたら末代まで祟られそうだ。
ていうか、この子なんでここにいるの?キキョウシティの外に行ったんじゃなかったの?修行なの?
……ふう。それにしても安らかな寝顔だ。
…………………。
顔に白いハンカチをかけて立ち去りますか?
はい YES!!YES!!YES!!▼

「……………………」

走るんだ私、脱兎のごとく、そう、オ○マーに狙われたオ○ガネモチのごとく……!!

「ぐえ」

「なにしてんのよ、あなた」

逃げられませんでした。
まあオオ○ネモチも何をしようと、ピ○ミン(紫が多い)に押しつぶされて宝物を吐き出す運命だもんね……。
分かっていたさ、彼を例えに出したことがフラグだったなんて。
わあいウィンディかっこいーい。……現実から目をそらしたっていいじゃない、人間だもの。

「ていうか!ナナコ!!」

「はいはい?」

「なんで中庭に来ないのよ?待ちくたびれちゃったわ!」

「……あれ、今日がバトルの日だよね?」

「そうよ?そうだけど遅いわ。もっと早く来なさいよ」

「…………」

あるぇー、今何時ー?何時よ今ー?
それなりに早い時間だぞうー?

「時間言われた覚えないんだけど……」

「え? ……でも、普通早く来ない?」

「バトル場使用時間は10時からですよっとー」

これ、泊まるときにジョーイさんが説明してくれることだよね?
……あ、そっか、この子野宿なのか……。
いやでも普通、そんな早く来たら迷惑だと思わんかね。

「………ご、ごめん、なさい」

「ん?」

「その、早とちりして、怒鳴っちゃったこと……悪かったと思うわ。 ……ごめんなさい」

「……んふふー、気にしてないよー」

自分何様だって感じだけど、こういう素直な子って嫌いじゃない。
むしろ好きだ。
強気ツンデレはあまり食指が動かないけれど、間違いを認めて正せる子は好き。
自分がそうじゃないと思う分、余計に。

「まだ時間あるし、そんなに早く来たんならご飯食べてないよね?」

「え、ええ……」

「じゃ、ご飯食べようよ。ここのご飯おいしいよ」

「え?でも、ここって泊まってない人には出さないんじゃないの?」

「ところがどっこい、お金を払えば食べられるんです。今回はおごってあげるから、ねっ」

気に入った人間と好きなタイプには甘いと定評のあるナナコです。きりっ。

「そ、そんな、……悪いわ。私が間違えたのに……」

「じゃあ私のはおユキちゃんがおごってよ」

「おユキちゃん?かわいい呼び名ね、うれしいわ……じゃなくて、そんな、ナナコ食べたんじゃないの?」

「えー?アイスおごってよう」

「私はご飯をおごってもらうのに?そんなの不平等よ」

ふーむ、おユキちゃんはなかなか強情だ。
フェイントにも引っかからないときた。
ここは下手にごまかしても無駄かな。無駄無駄ァ!

「私、気に入った相手はでろでろに甘やかしたいんだよね。つーことで、引きずってでもおごるからね」

「え?え?気に入ったって……」

「イッツ・ブレックファストターイム」

ブレックファーストと言っていて家族に笑われたのはいい思い出。
でも伸ばして言ってる人もいるから、結局どっちなんだかは今でもわからない。

……はて、今どこかでいっつほにゃららたーいむ、と同じようなことを言っている、緑髪の男子が頭に浮かんだ……。

あ、顔を赤らめたおユキちゃんにおごってもらったイチゴアイスはおいしかったです。









(11/11/27)
――――――――――――
彼を知っていることにしようとしたけど、そういえばイッシュについてはなんの知識もないことにしていたことを思い出しました。
うっかりうっかり。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ