捧げ物
□お化けなんてっ!
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「なんなんだよここ…なんでこんなにリアルにしたのさ。本当に何か出て来たらどうしよう」
暁は柳の木と墓石がたくさん並んでいる本物の墓場を再現されたエリアを恐る恐る歩いていた。
「暁?どうした。ここは私の持ち場だ。早く自分の持ち場に行かないか」
「ごめんなさいツォンさん………え………?」
振り返りツォンに向き直れば、そこに立っていたツォンの姿に驚愕し目を見開く。
その姿とは、白い着物を血で紅く染め上げ額には三角の布。長髪の黒髪を顔にかけ、見えている右半分の顔も血にまみれていた。
「ぎゃぁぁぁぁ!!出たぁぁぁ!!」
「あ、こら!待たんか暁!!」
大絶叫して逃げる暁にツォンは固まる。
幽霊と間違われたのだから無理はない。
『暁?どうした。ここは私の持ち場だ。早く自分の持ち場に行かないか』
『ごめんなさいツォンさん………え………?』
『ぎゃぁぁぁぁ!!出たぁぁぁ!!』
『あ、こら!待たんか暁!!』
暁の着物に付けた小型盗聴器からレノの耳に暁の声が入る。
「暁……ι」
よく見ろ…それは人間で、ついさっきまですぐ横にいたツォンさんだぞιと少し呆れる。
「ここは割りと人が多いし…任せて暁でも探しに行くか、と」
とは言え、抜け出すのを誰かに見られる訳にもいかない。
ゆっくりと物影に隠れながら持ち場を抜け出した。
「うっ……うぅ」
必死に逃げて来た暁はもちろん道なんか確認して逃げていた訳もなく見事迷子になり、井戸の影に隠れ自分の膝に顔を埋めて泣いていた。
(怖い…怖いよっレノ助けて!!)
「もうやだ、帰りたいよ…」
「やっと見つけたぞ、と」
「レノ!?」
背後からの呼び掛けに声と口癖でレノだと直ぐに理解した暁は、パァーッと表情を明るくし立ち上がり振り向く。
「ん?」
「うっ……」
「暁?」
暁の目に映ったレノの姿は髪がほどかれ額からドロドロに血を流した姿で息を飲む。
『「うっ…うわぁぁぁぁぁ!!」』
「ぎゃぁぁ!!」
耳に付けていたイヤホンの盗聴器からの声と生の暁の叫び声がコラボレーションし、レノの耳を襲った。
「暁…お前は………っ!暁!?」
暁を見れば気を失って倒れそうになっていた。
もちろんヘマをする訳も無く、直ぐ回り込み支えてやる。
「暁…」
目元に残る涙を拭ってやり、暁を抱き上げると控室に向かった。
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