捧げ物
□そんな時もある
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目を開ければ見慣れた天井――
タークス本部の仮眠室だ。
申し訳程度に付けられた窓から外を見れば真っ暗で、時間を確認 するともう少しで日付が変わろうとしていた。
寝起きの気分はかなり最悪。いやーな夢を見たせいだぞ、と。
俺の恋人、暁が俺の前から居なくなる夢。
――「じゃーな」
それだけ言って暗闇の中を歩って行く暁、呼び止めても俺の声は届かない。腕を掴もうと伸ばした手は風を切るだけ、追いかけようと走っても追い付かない…。
思い出しただけで気分が悪くなるぞ、と…。
「レノ、やっと起きたか」
仮眠室から出て本部に戻るとツォンさんの姿。
「暁はどこですか、と」
「暁なら帰した。お前が起きるのを待つと言っていたが、いつ起きて来るかわからなかったからな」
「そうですか、と…」
間が悪いな、と。
あいつの姿を見ればこの気持ち悪いモヤモヤと、胸がキュッと締め付けられるような…ポッカリ穴が開いたような、変な気分も治ると思ったんだがな、と。
「レノも今日は帰っていい。暁が待ってる、お前の心配していたぞ?疲れてるって」
そーいやここ毎日外の任務に明け暮れて、まともに暁と会ってないし話しも出来てない。
だからあんな夢を見たんだぞ、と
「じゃ、お言葉に甘えて帰らせていただきます、と」
「ああ、明日も休んでいい。ゆっくり体を休ませるんだ」
「了解」
暁が待つであろう自宅へ向かう途中に考える。
こんな時間だ、もう寝てるかもしれないぞ、と…。
暗い夜道を歩いていると夢の事ばかり思い出される。
俺は無意識のうちに走りだしていた。
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