聖騎士団第一隊隊長、カイ=キスクは、戦闘の終わったその場所をくるりと見渡した。 その眼差しは14・5歳の少年とは思えぬ鋭さで地平線を眺めている。 つい先程まで激戦区だったそこは、身動きひとつしないGEARの死骸が悪臭を立たせながら横たわっているだけだ。 傷付き、支援部隊から救護を受けている団員達を横目に、その中に紛れていない男の姿を無意識に探していた。 焦茶の髪を後ろで一纏めにし、額には赤いヘッドギア。聖騎士団支給の白地に赤の入った法衣に身を包んだ、あの男。 いつもならば少し離れた場所で煙草を一服しているはずなのに、その時に限って姿が見えなかった。 「ソルの姿が見えぬのう、カイ」 いつの間に来ていたのだろうか。 急に近くで聞こえた声に、カイは驚き振り向いた。 そこには聖騎士団団長である、クリフ=アンダーソンの姿があった。 「クリフ様…」 「やれやれ…。あ奴ときたら…どこで油を売っとるんじゃ」 討伐終了後、後は帰還するだけとはいえ、やることは山ほどある。 負傷者の手当て、被害状況の確認、その他にもいろいろと。 一応、軽傷の者には休憩を取っておくようには伝えてあったが、目の届かぬ所まで行ってもいいとは伝えてはいない。 もっとも、伝えてあってもなくとも彼にはあまり関係がなかったのだが。 ただでさえ規則違反の常習犯である。 戦闘時においても命令違反は数知れず。 まあ、それで被害を最小に納めることができたりする場合もあるので、一概に否定はできないのだが。 生真面目なカイには、そういう無鉄砲な所が理解できないようだった。 「まったくです。離れるのなら一言伝えていってくれればいいのに…」 本人とは顔を会わせれば言い合いになる、いつもの天の邪鬼さとは打って代わり、伝えてさえもくれなかったと口を尖らせて剥れているカイに、クリフは微笑ましげに目を細めた。 → |